心臓疾患を持つ犬のための食餌 




犬の心臓を健康に保つために

食餌の切り替えを始めることにより、心臓疾患を持つ犬のクオリティオブライフを
改善することに役立つかもしれません





 動物病院を訪れる犬のうち10%くらいは、なんらかの心臓疾患を持っています。
 しかし、最近までこの心臓疾患のための食餌療法はしっかり確立されていませんでした。過剰な食事中のナトリウムが引き起こす問題についてはよく知られていましたが、過剰摂取だけが問題なのではありません。摂取不足もまた、問題になりえますし、適切な食餌は、単に栄養を満たすこと以上に有益です。心臓疾患をもった犬 のために適切な食事を選ぶとき、このようなことを考慮することは、重要なことなのです。




● 突発性心不全
 重篤な心臓疾患の症状が極めて突発的に生じることがありますが、疲れやすいとか体重の減少とかのごくわずかな早期の徴候が現れるかもしれません。

 心臓性悪疫質、これは心臓疾患による体重減少の臨床上の病名ですが、これは健康な犬の、主に脂肪が落ちて体重が減ることとは異なります。心臓性悪液質は、その体と心臓の両方の筋肉が減少することによるものです。筋肉の減少は、免疫力や免疫機能に影響を与え、ついには生命を脅かしますから、やっかいなことです。サイトカインは心不全の犬において高いレベルで生産されるホルモン様物質ですが、これが筋肉減少の大きな原因です。
 サイトカインの数値を下げることは、心不全の付加的療法として有効かもしれません。そのもっとも簡単な方法は、魚油を与えることです。魚油はまた心臓疾患をもつ犬の食欲を増加させることがありますから、魚油の添加は筋肉減少や食欲減退の症状を持つ犬に有益でしょう。

 心不全の犬の場合、体重が減少する犬もいますが、体重過剰になる犬もいます。人間と違って、犬は冠状動脈疾患(訳注:心筋梗塞の原因となるもの)には罹患しませんから、肥満であってもこの病気の危険はありません。しかしながら、肥満は、犬の心疾患を悪化させることがあります。ですから、心疾患を持つ肥満犬は適切な減量プログラムが必要です。
 もし、健康な犬に高ナトリウムの食餌を与えても、余分なナトリウムは尿の中に簡単に排出されます。しかし心不全の犬は、効率的に排出することはできず、結果として、体内に残ってしまいます。しかしながら、心臓疾患の初期の犬であれば、極端なナトリウム食の制限は必要ないかもしれません。今までの食事よりも低ナトリウムの食餌に切りかえることによって、良い結果がしばしばもたらされます。病気が進行するに従って、食餌中のナトリウムの割合を必要に応じてさらに減少させることができます。塩分の高いペットフードや、人間の食べ物やおやつは、心臓疾患を持つ犬にはどんな時でも与えることを避けてください。

● 拡張型心筋症(DCM)において
 タウリンの欠乏
 1980年代の後半、研究者は、拡張型心筋症(DCM)を持つ猫のほとんどがタウリン欠乏であることを発見しました。(タウリンは、猫にとって必須アミノ酸であるが、犬ではそうではない)
 さらに、拡張型心筋症(DCM)を持つアメリカン・コッカー・スパニエルにおいて、タウリンのレベルが低いものが見られ、おそらくタウリンは心臓疾患に関係があり、タウリンの補給によって症状が改善されるかもしれないということが発見されました。他の犬種の拡張型心筋症(DCM)を持つ犬においても、タウリンのレベルが低いものが見られましたが、その多くはタウリンの添加では改善されませんでした。

 カルニチン欠乏
 拡張型心筋症(DCM)を持つボクサーの何頭かに見られます。(カルニチンは体内で作られる化合物で、エネルギー生産のために重要な物質です)
 まだ正式な研究はなされていませんが、拡張型心筋症(DCM)を持つ犬の一部は、カルニチン欠乏ではないかと言われ、そのような犬はカルニチンの補給により改善されるのではないかと見られています。カルニチンのサプルメントはほとんど副作用はありませんが、高価です。
 正式な定義というわけではありませんが、「ニュートラシューティカル」(netraceuticals)とは、健康と活力を増進させる自然の物質のことを一般的に差します。上述した栄養素と違い、ニュートラシューティカルは欠乏を補うために補給されるものではありません。事実、これらは栄養学的必要量よりも、通常かなり高いレベルで 与えられます。心臓疾患のある犬に使われる最も一般的なニュートラシューティカルはオメガ3脂肪酸(訳注:DHAやEPAなど)と補酵素Q10です。

● 魚油を与える
 オメガ3脂肪酸は、脂肪の構成要素で、全ての細胞の中に非常に低いレベルで通常見られます。そのレベルは、魚油のようなある食物を摂ることで増やすことができます。オメガ3脂肪酸は、心不全を持つ犬に有効かもしれませんが、人間の場合のように、犬では心臓疾患の予防効果はありません。補酵素Q10は、エネルギー生産と抗酸化に重要な、もう一つのニュートラシューティカルです。最近の研究では、補酵素Q10の補給は、人間のDCMに有効であるかもしれないと言われています。犬のDCMに対する補酵素Q10の効果については現在研究途上です。

● 心臓用療法食
 低ナトリウム、低塩化物で、ビタミンBを強化した、心臓疾患を持つ犬のための市販の療法食がいくつかあります。他の栄養素のレベルについては個々のフードによって様々です。最適のフードを選ぶために、もっとも重要な考慮すべき点は、その心臓疾患の度合いと臨床検査の結果です。その他、犬の症状と食欲についても頭に置いておくべきです。食欲不振は、心臓疾患をもつ犬には良く見られ、病態が進行していることを示す初期兆候です。犬が心不全の治療に良い反応を示したのに、その後食欲が落ちたなら、その心臓疾患が悪化していないか獣医師の診察を受けるべきです。もし、安定しているのであれば、ドライフードを缶詰フードに変えてみたり(またはその逆)、暖めたり、ナトリウムが少ないとされる、スープ、トマト・ソース、ツナジュースのような、風味を増すものを加えたりして、食餌の嗜好性を高めてみてください。はちみつやコーンシロップなども使えるでしょう。バランスのとれた、低ナトリウムの手作りの食餌がとても効果的である犬もいます。

● 塩分の多い食餌を避ける
 食餌の切り替えは数日以上かけて徐々に行わなくてはいけません。その犬が病気あるいは入院中の間は、食餌を大きく変えることは難しいことです。その犬の状態が良くなるのを待って食餌の切り替えを始めるほうが良いでしょう。もし犬がその新しい療法食を充分に食べないならば、獣医師に知らせて調整してもらうこともでき るでしょう。代替食(ただし塩分の多い物は当然避けるべきです。)を少なく食べることは、「理想的な」療法食を食べ過ぎてしまうことよりも犬にとっては良いのです。

 今の医学では犬の心臓病を予防する方法はまだわかっていませんし、心臓に問題のある犬にとっての最適な食餌についてまだまだ研究の余地がたくさんありますが、食餌の切り替えを始めることにより、彼らのクオリティオブライフを改善することに役立つかもしれません。

Oct. 1997. by Lisa Freeman
(リサ・フリーマンはタフト大学獣医学部の獣医臨床栄養学者である)
この記事はAKCガゼットより出典、GRCJ提供、転載の許可をいただいています





   
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