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種牡を探す
偉大なブリーダー達は、その種牡を選ぶための優れた第6感を持っているようです。純血種の動物の繁殖の歴史の中で、世界的に最も有名な人の一人はフェデリコ・テシオ氏でしょう。この人は19世紀中頃に生まれたイタリアの騎兵です。彼のサラブレッドのブリーディングにおける功績は一つの伝説として今も語り継がれています。ほんの少数の牝馬達から、テシオ氏はヨーロッパにおいて他を圧するような競走馬、そして種牡馬を作り上げることが出来ました。大規模なブリーディングをしている大牧場の金持ちのオーナー達が自分達の馬を改良するためにテシオ氏の馬に交配しに来ました。このようなブリーダー達がどのように行っているのかを見ることは、私達が自分の犬のラインを良くするために役立つ事と思います。
●一つの優秀なライン
テシオ氏のようなブリーダーが、どうやってほんの少数の牝を使って、種牡の選択に基づいた選択繁殖によって成功したかを調べる前に、前回の私の記事の、台牝を選ぶことによって良いライン(ボトムライン:血統書における一番底の母系ライン。)を作るという内容を思い出してください。前回の記事では、いかにして良い台牝達の遺伝子をそのX染色体上の遺伝情報を受継ぐ息子を通して集中させて、最良のものに改良していくかについて論じました。
X染色体はY染色体よりも長いですから、より多くの情報を持っています。それには限りなく多くの遺伝的欠陥に関連するものも含まれているのです。牡は絶えずX染色体をその母系(母、祖母、曾祖父.....)から受継ぎます。そしてY染色体(これが性別を決めるのです)はその父系(父、祖父、曾祖父....)から受継ぎます。前に説明した通り、色盲の遺伝子を持つ母親から生まれた息子は、その母親が見かけは正常であっても、この病気を持つかもしれません。なぜなら、悪いX遺伝子をマスクするもう一つの健康なX染色体がないからです。
Y染色体上にはあまり多くの遺伝情報はないかもしれませんが、しかしその情報は、良い牡のラインを作るのにかかわります。なぜならY染色体の一部は、X染色体と相対していない(対になっていない)ので、その部分の遺伝情報はそのまま表現型となります。このY染色体上の遺伝情報は父から息子にのみ受継がれます。娘はY染色体を持たないからです。それゆえ、遺伝力の強い種牡の息子達はその牡の顕著な特質を受継いでいるが、娘達は受継がないということがあるのです。
●良い組み合わせを見つける
前回の記事では、良い台牝のラインを基礎とし、少数の、選択されたブリーディングプログラムに集中するブリーダーがその犬種へ貢献することについて語りました。その意図は、ブリーダーは強力な牝に合う種牡を求めていくことにより、このボトムラインを改良し強めていくことができるということでした。また同時に、テシオ氏のような偉大なブリーダーは良い台牝を強力な種牡ライン、すなわち血統書の一番上のライン(父、祖父、曾祖父...)で良い特質が強調されているようなラインにかけていきました。テシオ氏について言えば、血統はいいけど安く売りに出された牝馬を買い、それからその牝を補うような強力な種牡を探しました。
この交配のやり方は、ネアルコという史上最強のサラブレッドを生み出しました。アメリカの競馬ファンなら、このネアルコの孫のノーザンダンサー、曾曾孫のセクレタリアットを良く知っているでしょう。この2頭はどちらもネアルコから直接種牡ライン(テイル・メールライン)を受継いでいます。(つまり血統書上、ネアルコの名前は一番上のラインにある。)。テシオ氏と彼のブリーディングのやり方を研究して、私はテシオ氏は、あのとらえどころのないY染色体に関連していると考えられる良い特質を持った最も強力な種牡を選び出す第6感を持っていたのだろうという結論に達しました。おそらくそれらの動物の望ましい特質は性別に関連していた、あるいはそれらはY染色体の一部の上にあり、X染色体と相対していなかったと言えるかもしれません。
色盲やヘモフィリアのような遺伝性の病気についてはわかっているのと対照的に、どの特質がY染色体を通して遺伝するのかは、現時点では推測の域を出ません。しかしその存在と遺伝的特質に与える可能性を理解することは、小規模なブリーディングプログラムによって傑出したブリーディングを行うことにつながります。将来、技術の進歩によりどの染色体にどの特質の遺伝情報があるのか解明される日が来て、真面目なブリーダー達は、その共通の目標である、少ない数でより良い犬を作るということを達成することができるでしょう。
●理想的な種牡
理想的な種牡とは、常に牝の特質を改良するような犬です。強い自己意識を持ち、心身共に健全で、長所を直子のみならずその後の世代にも伝えていくような犬です。遺伝性疾患を持たないだけでなく、健康で、長生きで、良いブリードタイプと構成を持つ犬のモデル犬のようでなくてはいけません。交配した牝犬の特質を次の世代で改良するのに加えて、その種牡の与える影響は、その先の世代にブリーディングされていくどんな血統ともバランス良く調和しなければなりません。
イングリッシュコッカースパニエルのCH.Dunelm's Galaxy という犬はそんな種牡でした。彼の長所を息子からその息子へと何世代も受継がせ、一つの王朝を作りました。もう1頭アメリカにおいて素晴らしいラインを作り上げた牡をして思い出されるのはあのすごいレークランドテリア、Eng/Am.Ch.Stingray of Derryabahです。これらの種牡はその当時、ショーリングで活躍した優れた直子を出しただけでなく、その後数十年に渡って、彼らの子孫は活躍し続けています。
そのような卓越したスタンダードに合致する種牡というのは少ないですが、そういう犬はその犬種にとって大きな貢献をします。通常、そのような種牡はいわゆる「神がかり的な風貌」を持っています。これは説明するのは難しいですが、百聞は一見にしかずです。サラブレッドのテシオ氏のように、一人のブリーダーの選択繁殖のやり方が私自身に強い感銘を与えたので、私は自分の最良の種牡に、ネアルコの息子であるニンバスという名前を付けました。私の犬達も彼らのようであってほしいものです。
AKCガゼット97年2月
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