選択のプロセス パット・トロッター著/提供:GRCJ




選択のプロセス

  各世代の最も良い個体のみが、将来の血統書に名を連ねて行くのです。

  選択というのは、あなたの暮らしにおいて毎日行っている意思決定の中でもとりわけ特別のものです。あなたがグルメ・レストランに行くと、たくさんの最高の料理がメニューに掲載されていてそこから選択しなくてはいけません。ドライブスルーになっているファストフード店でさえも何か選択しないといけません。ブリーディングプログラムにおいては、どの個体を後の世代の血統書の中に残すかを選択する能力が最も重要なものです。

  料理を選ぶ時をちょっと考えてください。4つ星レストランでは、多くのメニューがあってそれぞれに魅力があります。それは、上質の食材を用いているとか、シェフの腕前が良いとかで、メニュー上の各料理は単に値段だけではない違いがあります。一方、ファストフード店で出されるハンバーガーとフライドポテトは、大勢の人にとって手軽な食事になっていていますが、悲しいことに本当にすばらしい食べ物とは言えず、それぞれの差も全く見つかりません。

  お互いを補なえるような第一級の犬を用いたブリーディングプログラムというのは、高級レストランの忘れられない料理のようなものです。選択した料理の素晴らしさが忘れがたく、ある種の貴重な経験になるだけでなく、新しくさらに質の高いものに目覚め、そこに努力して到達しようとするようになるのです。その新しく誕生した美食家の将来と同じように、あなたの選択した犬種の将来は、このようにしてプラスの方向に影響されていくのです。

常に客観的な見方をする

  ブリーディングにほどほどの個体を選択する事に満足しているブリーダがその純血種にどんな影響を及ぼすかは、ちょうど、ファストフードで育った人が食文化にどのような影響を与えるかと一緒です。彼らの選択は、逆に質を低下させてしまうような中間的な個体を生み出します。ブリーダーがその犬種を改善するかあるいは維持したいと願っているのなら、このようなやり方はさけねばなりません。

  ブリーディングに用いる犬を選択する際に、可能な限り最善の選択をするためには、ブリーダーは絶対に次の3つを持っていないといけません。すなわち、
1)一般的な犬体の構成とその犬種に特徴的な構成についての知識。
2)その犬種のタイプを作り上げ、犬種本来の機能を果たすための、その犬種の特質についての知識。
3)その知識を用いて賢い選択を行うための客観的な見方。

  優秀なブリーダは、必要な知識を身につけるための適切な個人研究をするでしょう。しかし、その公式の難しい部分を身につける事ができないことがあります、すなわち、自分に厳しい要求をするための、客観的な見方です。驚くべきことに、人生の色んな局面ではとても厳しい人が、こと自分の犬に関しては客観的になれない人がいます。確かに犬はとても愛すべき生き物ですから、感情を抜くことが難しいのは分かります。しかし、成功するブリーダーというのは、客観的な見方によって決定するやり方を習得しています。かわいいけど、クオリティの物足りない犬をブリーディングプログラムからはずし、単にペットとして楽しむことができるのです。

基礎台牝の選択

  多分、選択能力を磨く上で最も難しいハードルは、自分の基礎台牝を選択することでしょう。真の基礎台牝とは、その犬種の基礎台牝とも言えるものです。ただ単に、最初に飼った牝犬を自分の基礎台牝にしたというのとはわけが違います。しかし、その最初の牝が、ブリーディング用の牝としての可能性をあらゆる観点から調べて、熟練した方法で選択された牝ならば、その犬を台牝にすることは悪いことではありません。けれども、もし最初の牝がこの基準に達しないのに、とりあえず台牝にするなら、「ブリーディング・アップ」(breeding up)といわれる状態になります。すなわち、ブリーダーは、ちっとも前進せず、時間ばっかり喰うことになるのです。

  ブリーディングアップとは、ごく平凡な牝をブリーディングに用い、次の世代で改善されることを願って、それに良い種牡をかけるというやり方です。そして、生まれた中で最も良い牝の子犬を残して、また次の世代で改善されることを願って同じことをやるわけです。これには、お金と時間がかかります。なにより、資財を浪費するだけでなく、犬の数の不必要な増加をもたらします。第一級のクオリティを持つ牝犬から始めると、目的の達成までの時間が早くなり、犬の数やブリーディング回数も少なくてすみます。

良いブリーディングから生まれ、良いクオリティを持ち、その犬種の優秀な血筋を持った基礎台牝を持てば、ブリーダーは成功へ向けての最善のスタートを切れるのです。血統・構成・代々の健全性・賞歴などに基づいて賢明な選択をする技術によって、クオリティの高い台牝を最初に選ぶなら、その犬種の改良に本当に寄与することになるでしょう。

  ●自然選択と人為選択

  選択の最も原始的な形は、母なる自然が行う選択です。よく知られるように、「適者生存」の原理により、弱い、病気の、そして老齢の個体は消滅します。自然選択は、強く健康なものを選びますが、今日我々の行う人為選択は別の観点から行います。それゆえに、最大の注意を払ってブリーディングストックを選択しなくてはいけないというブリーダーの責任は以前にも増して重大になっています。

  現在の獣医学技術は、母なる自然では遺伝子プールから除去していた個体まで救ってしまいます。しかしまた、獣医学技術は遺伝的問題を確認する手段も与えてくれて、それによってブリーディングの際の選択ができます。将来的にはバイオテクノロジーが、望ましい遺伝的特質は保存しつつ、遺伝的問題を確認しそれをブリーディングプログラムから排除することの助けを与えてくれるでしょう。

  ですから、選択が純血種のブリーディングの際のすべての成功の鍵と言えます。各世代におけるベストな個体を選択していくプロセスにおいて、選択は、基礎台牝の選択から始まり、それから次々と続いていきます。そして各世代の最高の個体のみが将来の血統書に名を連ねることになります。
  選択のプロセスはブリーダにとってとても重要なものですから、常に一貫していなくてはいけません。ブリーディングの度に考えなしに選択基準を変えるブリーダーは、改善できる機会を逃してしまうことになります。ブリーディングプログラムが成功を収めつつあるようなら、ずっと同じ形質や特質に重点を置くべきです。それゆえに、ブリーダーは、あらかじめブリーディングプログラムの初期のうちに、タイプを心に描き、どのような特質がそのタイプを機能的にしているかを知ることの重要性を認識しなくてはいけません。

  私の次のコラムでは、あなたのブリーディングプログラムを改善する助けになるいくつかの選択方法について書きます。

AKCガゼット97年7月

  パトリシア トロッターは、ノルウェイジアン・エルクハウンドの永年のブリーダーで、30犬種以上の認定審査員です。また、ジュニア・ショーマンシップの審査員です。テネシー州Antiochに住み、「Born to win」の著者です。

AKCガゼット97年4月




    cavalier@cavaliernet.com


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