良い台牝を作る パット・トロッター著/提供:GRCJ




良い台牝を作る

    どんな犬種でも、その土台には優れた台牝のラインを持っている優秀なブリーダーがいると思います。そのようなブリーダーは良い犬を作って自分自身の喜びとするだけでなく、他の人にもしっかりとした基礎犬を提供しています。そのようなブリーダーは全犬種に、とりわけその犬種に貢献していると言えます。通常そのようなブリーダーは自分の種牡を抱えることはしていません。そうやって、手軽に身近な種牡を選んでしまう誘惑を避けているのです。

  では、そういうブリーダーはよその犬と交配しながらどうやって自分の牝のラインを強めていっているのでしょうか?その答えは、さかのぼるとその牝達のラインと同じ先祖を持つような「似たタイプ」の牡と交配するという事です。そしてこのようなブリーディングを行うために重要なことは、その台牝の父犬をどう見るかを学ぶことです。

X染色体の役割

  あなたの牝のための種牡の選び方(調査研究の仕方)を理解することには、そのブリーディングの全体像にX染色体がどのような役割をするのかという事を理解することも含まれています。犬には39対の染色体があり、そのうちの一対は、性別を決定する性染色体です。牝は二つのX染色体を細胞内に持ち、牡はX染色体とY染色体を持っています。牡の精子が作られる際減数分裂が行われ、一つの精子はX染色体を、もう一つはY染色体を持ちます。牝の減数分裂ではどちらの卵子もX染色体を持ちます。そして精子と卵子が授精する際、XかYかどちらの染色体を持った精子と授精するかで性別が決まるのです。もし、X染色体を持つ精子が卵子と結合するならXXとなり牝になります。もしY染色体を持つ精子が結合するならXYとなり牡になります。

  人間の場合、X染色体と関係した形質は50以上知られています。X染色体はY染色体よりかなり長いので、ほとんどの遺伝情報はX染色体上にあります。サラブレッドの繁殖者は、X染色体は性格と心臓の強さに影響を与えると言います。X染色体は特に遺伝性疾患に関する多くの遺伝的情報のキャリアーではないかと考えられています。病気の情報を持った(あるいは突然変異した)悪いX染色体は、牝の場合はもう一つのX染色体に異常がなければ、その健康なX染色体が悪い形質をマスクしてしまうことがあります。つまり、悪い遺伝子を持っていても見かけは健全ということです。もし両方のX染色体が異常であれば、その牝はその病気を持っているでしょう。それゆえ牝のほうが牡より多く子宮内で死亡すると言われています。なぜなら両方のX染色体に異常があるゆえの致死的な遺伝子を持ってしまう危険が2倍だからです。

  牡はX染色体を一つしか持っていませんから、もし異常なX染色体を持っても、それをマスクしてくれる健康なX染色体はないということです。それゆえその病気は発現します。昔からの遺伝学の教科書は、その事に関して、なぜ色盲でない母親から色盲の息子が生まれるのかを説明しています。色盲の男性の息子は異常のあるX染色体を受継がないでしょう、しかし娘は受継ぎます。そしてその娘はその息子に異常のあるX染色体を受継がせます。こうしてずっとジグザグパターン(隔世遺伝)で受継がれていくのです。

  一つのX染色体、つまり父犬から与えられるX染色体は、その母犬から受継がれたものです。それゆえに、血統というのは、良い台牝から生まれた種牡のみを使って作られた優れた台牝を追跡していくことによって組み立てられるかもしれません。つまりこれが優れた子出しの台牝のラインの作り方なのです。すべての牝の子犬は、父親がその母親から与えられたX遺伝子とおなじX遺伝子を父親から受継ぎます。それしか持っていないのですから!母親が子犬に与えるX遺伝子は母親の母親から受継いだものか、あるいは母親の父親の母親から受継いだものです。この情報を用いてブリーダーは各世代において、究極の優れた台牝を作り出すという希望を持って、台牝のラインを強化していくことができるかもしれません。このようなプランニングによって、そのブリーダーが幸運にもしっかりとした家系と母系を持つ基礎犬からブリーディングを始めても、世代を重ねるごとに優れた遺伝子プールが薄まっていくというような事を防げるでしょう。さらに言えば、もしそのブリーダーの基礎犬が期待していたレベルのものでなかったとしても、このようなブリーディングを行えば短時間に改良する助けとなるでしょう。

優れた基礎台牝

  優れた台牝とは通常とても良い二つのX染色体を持っている犬であるという事を覚えていなければいけません。これが優れた台牝を作り上げるものなのです。私の最良の台牝はCh.Vin-Melca's Vikinaという牝でした。彼女の息子の一頭のCh.Vin-Melca's Howdy Rowdyはこの犬種のトッププロデューサーとなり、彼女のもう一頭の息子のCh.Vin-Melca's Vagabondは全犬種のナンバー1となりました。Howdy Rowdyは多くの優れた牡犬や牝犬の父となり、「種牡の種牡」として有名になりました。彼の半兄弟であるVagabondは何頭かのとても良い犬の父となりましたが、それにもまして彼は沢山の優れた牝犬を作りました。彼はそれらの牝を通して彼の良いものを受継がせていったため、「台牝の種牡」と呼ばれました。次のページの図はいかにこのHowdy RowdyとVagabondoの母犬の遺伝子を集結させ、次の世代にこの遺伝子の影響を多く受継いだ牝を作るかという試みを表しています。つまりNightcapは片方のX染色体をVagabondからもらってますが、これがVagabondの母のVikinaからのものであることは一目瞭然ですね。またNightcapはもう一つのX染色体を母犬のHappy Hourからもらっていますが、これはその父Howdy Rowdyを通してVikinaから来たものか、あるいはその母Vikaから来たものかどちらかです。Vikaもまた優秀な台牝です。当然Nightcapが優れた台牝であったことは疑いの余地がないでしょう?彼女の二つのX染色体がどちらもVikinaからのものである確率はとても高いですし、少なくとも一つはそうなのですから!

  このような情報を自分のブリーディングプログラムに活用するブリーダーは、台牝のラインを強化することに専心することにより、質の高いラインを確立することにおいて前進することになるでしょう。そしてそのようなブリーダーは、しっかりとした台牝のラインによって、その犬種の基礎犬となった種牡がその犬種全体にもたらした貢献を再現することになり、犬種に大きく寄与する人となれるでしょう。次の私の記事では種牡の選択によって牡のラインを強化することについて論じます。

AKCガゼット96年12月




    cavalier@cavaliernet.com


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