.jpg)
バランスのとれたブリーディングブリーディングにおいて健全で巧妙な組合わせを決定するには、遺伝学の理解と、巧妙なタッチとが必要です。
バランスの取れたブリーディングという言葉の意味を理解するというのは、うまく作出された犬という言葉の意味を最も純粋な意味で理解する、という事です。バランスの取れたブリーディングの結果生まれた犬は、完全に調和のとれた血統の産物です。そういう血統が溶け合って、身体的な強さと、実質、運動性能、そして健全さなどが、エレガントなブリードタイプと組み合わさった犬を作り上げるのです。
そんな血統が組み合わさって、安定し、良く順応できる精神的、肉体的特性を持ち、健康で長生きし、生活を楽しめる犬を作り出すのです。バランスの取れたブリーディングとは、ラインブリーディング、インブリーディング、クロースブリーディング(近縁の組合わせ)、そしてアウトブリーディングをうまく活用し、これらを最も効果的に組み合わせて行います。
バランスの取れたラインブリーディングにおいては、祖先の影響が父犬と母犬の両方の血統を通して伝えられる訳です。その際、祖先の「血液」が生まれたオスの子犬とメスの子犬の両方に伝えられれば、X、Yのそれぞれの性染色体(訳注:牡・牝を決定する染色体)に付随していると思われる捕らえどころのない遺伝子を限りなく結集させることになり、バランスはより強化されます。●うまい選択を行うには
前の二つのコラムで、私は犬が子孫にその遺伝特性を高いパーセンテージで伝える力が、どんな風に性染色体と関連しているかを述べました。こういう遺伝力が、一方で優秀な台牝のラインを生み出し、また一方で一世を風靡する種牡のラインを生み出すことに大きく関与しているのです。「ブリーディングの名人」というのは、バランスの取れたブリーディングによって優秀性を追求する過程において、この情報も一つの手がかりとして使用するのです。偉大な種牡の足跡をたどってみると、興味深い事が分かる事があり、ブリーダーにとって勉強にもなり、またヒントにもなるものです。また、偉大な台牝の父犬は、牡のラインで良い成果をあげる種牡とはその血統のパターンが根本的に違うものです。傑出した台牝を生み出す種牡というのは、種牡としての能力がすぐには子孫に現れないので、最初の内は十分に評価されないことが時として起こるものです。
最も優れた種牡というのは、自分の特質を息子と娘の双方を通して等しく伝えるものです。そういう種牡は牡犬のラインと牝犬のラインの両方から並外れて強力な遺伝的特性を受け継いでいるのです。ただし、こういう部類の種牡というのはめったにいないものですから、血統を強化しようと思ったら、祖先たちの性別が重要な要素である、と言う事を心にとどめておくのがカギです。
すべての純血種の遺伝子プール(遺伝子の全体)は、突然変異を除けば、その犬種のスタッドブックが出来上がった段階で(他犬種との交配で遺伝子が導入されなければ)有限のものになってしまうのですから、(訳注:つまりもう新しい遺伝子が入ってくることはないということ、そしてすべての純血犬は先祖をさかのぼれば限られた数の先祖犬に行き着く。)犬種の改善と言うのはブリーディング方法と交配相手を賢明に選択する事によってのみ達成できるものなのです。つまり、私達は同じ遺伝子プールを相手にしているのですから、改善を行う唯一の方法は選択するという事なのです。偉大なブリーダーと言うのは自分のラインと犬種を向上させる犬を見つける本能と知識とを持っているものです。彼らは確実に、的確な遺伝的材料をそのブリーディングに取り入れ、作出犬にそれを受継がせることによりバランスのとれたブリーディングを一貫して行っていきます。ちょうど優秀なシェフがその料理を完璧に作るにはどの材料をどれだけ配合するかを直感的にわかるように、ブリーディングの名人は、優秀性を追求してバランスの取れたブリーディングを行うのです。
非凡な犬の血統を調べてみると、優れた血統を持つ兄弟姉妹をうまく組み合わせることによって、しばしば良い成果を上げていることがわかります。おそらくそれらの犬の父である傑出した種牡はその犬自身も良いブリーディングによって作られ、その種牡の母犬も同様であり、優れた台牝であることでしょう。さらにその兄弟姉妹犬の母犬も優れた台牝であったなら、それらの犬を組み合わせることによってこの一族の長所を子孫に受継がせる可能性はさらに強くなります。
●あなたのラインを強める
兄弟犬を血統書の一番上のライン(父犬→その父→その父....のライン)に持ってくるなら、牡の遺伝子の影響によってその次の世代を強める可能性を強くすることができます。姉妹犬を血統書の底のライン(母犬→その母→その母....のライン)に持って来ると牝の遺伝子の影響によって同様の効果が期待できます。なぜ従兄妹同士の組み合わせで優秀な犬を作ることができるのかという理由もここにあります。
このようなバランスの取れたブリーディングとは、「すべての役者が正しく配置される」ことによってうまく行きます。なぜなら、牡に関連した特質はその兄弟犬の息子達を通して受継がれ、牝に関連した特質はその姉妹犬の娘達を通して受継がれるからです。ですから優れた従兄妹同士の交配をしても、それらが血統上の正しい位置に配置されないと不本意な結果に終わることがあるのです。
アウトクロスのように、思いもかけないような組み合わせから優れた種牡が生まれることがありますが、それはおそらく、すべての良い遺伝情報(性別に関連したものもそうでないものも)が正しく配置され、望ましい遺伝子が何世代かを経て組み合わされてその犬に受継がれたからでしょう。両親から受け継ぐ好ましい遺伝的性質が、他の場合に比べてこの時は二重に強化されて現れるのです。
なぜ伝統的な名犬のラインブリーディングという良い血統の組み合わせで、がっかりするような犬が生まれるのか、という理由もここにあります。つまりそれらの犬が、その長所を子孫や後の世代に受継がせることができないような位置に血統上配置されてしまったのです。そういう長所を持つ遺伝子は直子すべてが持っているか、あるいはすべてが持っていないかのどちらかの結果となるのです。
すべての犬は、次の世代に受継がせる遺伝パターンに関して、様々な傾向を持っています。それゆえ、たとえ血統書上に同じ先祖犬の名前が数回登場しているとしても、その犬からの遺伝情報がどれも同じように伝えられているとは限らないのです。事実、性別に関係した遺伝様式というのは、全体の遺伝システムの中にある様々な遺伝様式のほんの一部に過ぎません。
ある特別な血統の中で、バランスの取れたブリーディングが多く行われるに従って、後の世代に渡ってその犬種を向上させていくことができるような犬がその血統から多く生まれることになります。しかし、経験の長いブリーダーならご存じだと思いますが、この方程式の忌々しい所は、望ましい特質の遺伝様式を見つけることの難しさです。 どんなに遺伝学の知識を持っていたとしても、ブリーディングの名人が、犬種を向上させるために絶妙の選択を行うには芸術的な技術も必要です。バランスの取れたブリーディングを行うこととは、もっとも効果的で産出的な方法で、望ましい特質をえり出すために用いることのできるいくつかの道具の中の一つです。
AKCガゼット97年4月
![]()
cavalier@cavaliernet.com