血統のプロファイリング パット・トロッター著/提供:GRCJ




血統のプロファイリング

血統を研究することは、ブリーダーが交配の計画を立てる際に可能な範囲内での最も賢明な選択をするための助けとなります。
-パトリシア V. トロッター-

 「うまく受継ぐことは全く望ましいことである。しかしその栄光は私達の祖先のものである。」これは古代ギリシャのプルタークが述べた言葉ですが、彼は確固としたブリーディングの基本概念を理解していたことがわかります。血統書というのはそのようなブリーディングのいわば公的証明です。それはある個体の何世代にも及ぶ家系図です。5代祖の血統書は精通したブリーダーが通常使用する道具です。血統書というものはおそらくは初期の馬商人が使いはじめたもののようです。彼らは販売促進のため、自分が売る馬のバックグラウンドを記憶していたのです。フォックスハウンドの愛好家は、この犬種の人達が最初に犬で血統を記録するようになったと主張します。彼らの主張には妥当性があります。なぜならそれらの人々はそれ以前からすでに彼らの馬の血統を記録していたからです。(訳注:フォックスハウンドは馬を使った狩猟に使われる)血統を記憶しておくという慣習に、それを紙に記録することによって正確さが加えられ、そしてスタッドブックへの公式登録が始められたことによりさらに正確性が高まりました。そして将来は、何世代もの犬のDNA情報が子孫のために記録されるようになることによって、益々血統書の正確さは増すでしょう。

★ごちゃごちゃしているものを配列する
 血統の研究とは、ごちゃごちゃになっているものを配列する試みと言えます。すべての生き物はその祖先の合計結果であると言えます。血統の専門家には、遺伝子は各世代で自ら再度シャッフル(訳注:トランプの札を切ること、つまりランダムに配置しなおされること)されると考える人もいます。血統を真剣に勉強している人は、血統の探求とは単に名前だけを調べる事以上のものであることを知っています。特質を調べないで名前を調べることはほとんど価値のないことです。各個体についての情報が多く得られれば得られるほど、血統の研究は有益になります。健全性、実績(ショーや競技会などの)、ブリーディング成績などが書かれている血統書はブリーダーにとって最も価値のあるものです。そのような血統書はその犬が受継ぐ可能性があるいろいろな特性についての情報を、良い面についても悪い面についても提供してくれます。望ましい先祖犬が血統書上に一回以上出て来るからと言ってその先祖犬の傑出した特質がその犬に受継がれることを期待出来るわけではないという事をブリーダーは理解しなければいけません。その特質が表われるか表われないかは、父犬と母犬の両サイドから何が「コピー」されたかによるのです。さらに言えば、それぞれの先祖犬は−たとえスタープレーヤーが血統上で強いラインブリーディングされていたとしても−後の世代に伝わるかもしれない特質や素質をいくつも持っているのです。ですから望ましい犬の名前が血統書上に頻繁に出てきても、その度にその犬が同じものを受継がせているわけではないということです。同じブリーディングを繰り返したのに前回と違ってがっかりする結果が生じることがあるのはこのためです。同じ犬から伝えられる遺伝メッセージが前回とは違っていたということなのです。

★血統を様々な角度から検討する
 血統の研究の目的は望ましい先祖犬の名前を血統上にふさわしく配置できるようブリーダーを助けることです。これまでの私の記事で述べたように、これには優勢な牡のラインを血統のトップライン(一番上のライン)に置くことにより、Y染色体に関連した遺伝情報を牡の子孫に受継がせていくことも含まれています。そしてX染色体に関連した遺伝力を最大限に発揮させるために、偉大な台牝達と良い台牝を生み出す種牡達が血統上の牝サイドに配置されます。その目的は最良の遺伝子を集中させ、実際の繁殖犬に結果を出すことです。血統を検討するには次のような方法があります。

1)交配しようと考えている犬の特質の概要を念頭に置きます。長所と短所の両方を認識します。たとえどんなに有名犬であっても、その犬の特質を知らなければ意味がありません。

2)同じことを近い先祖犬(両親や祖父母)に行います。血縁が近いほど、あなたが得たい情報がより多くそこにあるはずです。「傑出した曾祖父犬」よりも「良い父犬」のほうがより大事です。

3)その犬の長所と短所のリストを作ることにより、その近い先祖犬のそれぞれの特質の遺伝する可能性を予測します。

4)その犬の兄弟犬を調べ、その家族の類似点を評価します。

5)その犬の父犬のライン(父−祖父−曾祖父)と母犬のライン(母−祖母−曾祖母)の繁殖成績の記録を入手します。

6)その血統上のインブリーディング、すなわち近親交配の割合を考慮します。

7)交配相手に考えている犬の血統も同様に調べます。

8)あなたが計画しているブリーディングと同じような血統の組み合わせの子孫を探し、それらがどのような犬になったかを調べます。例えば、あなたの牝と近い血統の牝があなたが考えている牡に交配されていたなら、その子達はどのようであるか、とかです。

9)その血統は合いそうかどうか考えます。バランスは取れていますか?エレガントなタイプと、健全で機能的な四肢をどちらも兼ね備えて、バランスが取れていますか?バランスの良い遺伝的な組み合わせが、父犬と母犬の両方から子供に受継がれていますか?

10)生み出される子犬はこのラインにうまくフィットするだろうか?と自問してみてください。その犬はその血統を調和良く受継いだ「結合体」のようであり、将来その血統の中で産出的な役割をする犬になるでしょうか?同じ血統の中でも他の親族とあまりにも違っている犬は、その血統を後の世代に受継がせるために用いるには極端すぎるものだということを覚えておいてください。

★確実性を高める
 これらの検討作業はブリーダーが成功したいと思うなら絶対に必要なことです。求めたい情報が入手できない時もあります。その犬がもうこの世にいなくてその犬に関する情報がほとんど、あるいは全く得られないというような時です。もしくは、願わしくないことですが、その血統の評判を落としたくないという間違った努力によって事実が秘密にされているという場合もあります。このようなシナリオは、あなたの調査能力への挑戦となりますが、粘り強く調査を続けると、正確なプロファイルを完成することができるでしょう。
 意図的に正しくない情報を提供する人がいることにも気を付けてください。1970年代のあるトップウイニングドッグは、とても攻撃性が強いという噂があったゆえに、用いるのを避けていたブリーダー達がいました。実際には、そのハイスピリット(気性が強い)な犬をハンドラーがうまく扱えなかったため、間違った印象を与えて悪口を言われたのです。あなたの血統上の犬達に関する事実を見つけ出すことは、刑事がたゆみなく追跡すること、あるいは学者が事実を追求して研究するこ とに似ています。
 成功するブリーダーは、タイプ、質、頭部の特性、ボディ構成、性質に関して確実性を高めるために、血統を研究することを学んでいます。彼らは5世代の血統書を研究し、そして子犬にどのようなものを生じるかを「感じる」ことができるのです。そういう熟練したブリーダーは、この技を過去の血統を研究することにより得ています。長年に渡る動物の遺伝傾向には確かにあるリズムがあります。熟練したブリーダーはそのリズムを用い、後世代の血統にそれを導いて行きます。
 一頭の牡と一頭の牝の二つの血統を合わせる場合の遺伝子の組み合わせの可能性は無限です。残念なことにその結果は子犬が生まれてみるまではわかりません。しかしそれでも、あなたは最も賢明な選択をするために得られる全ての情報を活用するべきです。血統を研究することや、他の純血種の犬をブリーディングする際にやるべき事の価値をどうか見過ごさないでください。

AKCガゼット98年8月




    ccavalier@cavaliernet.com


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