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そこからここへ(AKCガゼッタ98年4月号より) By Patricia V.Trotter 古いことわざに、「ここからは、そこへは行けない」というのがあって、多くの事に適用されます。たとえば、旅行の際、一番良いルートで行っても困難な道程で、最悪だとたどり着かないということなどです。このことわざは、ある時には、犬の遺伝情報が次世代まで伝わらないということを述べるときにも適用できます。
以前のこのコラムで、X、Y染色体上にある遺伝情報が、子孫の性別によってどのように伝わるかを話しました。父親は、その母の遺伝物質から引き継いだ情報を、その娘たちに伝えます。父親はまた、その父から引き継いだ伴性の(Y染色体上の)遺伝情報を、その息子たちに伝えます。その結果、血統書のテール・メールライン(血統書の一番上のライン)が続くことになります。この情報が、優秀な血統の骨組みとなる、優れた台牝のラインや、「優性な」種牡ラインを作り上げる上で、どのように助けになるかも議論しました。
ある特定の形質に関する遺伝子をどちらの親からもらうかによって、直子達に明らかな違いが表われます。幾つかの遺伝情報は、性染色体の上にありますから、血統書には「ブラックホール」がある、すなわち、血統書の特定の位置にある遺伝情報は、子孫に伝わらないということを、ブリーダーは理解しなくてはいけません。
わたしの、97年2月号のコラム(種牡を探す)は、性染色体の働きについてのもので、サラブレッドの名ブリーダー、フェデリコ・テシオ氏のブリーディング方法について焦点をあてました。彼の成功は、性染色体に関する「第六感」を持っていたことによるものと私は結論しました。米国フォックスハウンド協会が出版している「The Covertside」の編集長である、ノーマン・M・ファイン氏が、私のあのコラムを読んで、幾つか検証してくれました。ファイン氏は、「The Coverside」誌97年12月号の彼の記事の中で、私のコラムを引用しました。彼は、私のコラムで論じられた考えは妥当なものだと結論付けて、そして彼は血統書の「ブラックホール」の位置を特定するチャートを作りました。
ブリーダーは、ファイン氏のチャートを用いて、どこの遺伝情報が次世代に伝わらないかを知ることができます。しかしながら、どんな遺伝情報が性染色体上にあるかは正確にはわからないということを覚えておいてください。今から述べることの多くは複雑に感じられるかもしれませんが、「種牡を探す」のコラムを参照しながら読んでいただければ理解するのはそれほど難しくないと思います。
● 深いブラックホール優秀なサラブレッドの一族を深く研究すると、心臓のサイズが増加するという貴重な形質(訳注:サラブレッドの能力と心臓のサイズは重要な関係を持っている)を繁殖牝馬が子に伝えた時、チャンピオンに相応しい度胸(訳注:サラブレッドにとって闘争本能はとても重要)と優れた性質を持った馬を生産するということががわかります。セクレタリアット(アメリカの三冠馬)は、この形質を彼の母サムシングロイヤルから引きついだと考えられます。セクレタリアットは、おそらくこの遺伝情報をその娘たちに伝えたでしょう。サムシングロイアルは、この形質を彼女の父プリンスキロから引き継いだに違いないでしょう。このように、X染色体上の遺伝情報は、世代から世代へとジグザグに伝えられるのです。Y染色体上の遺伝情報は、父から息子へと直線的に伝えられます。(図1の血統書の一番上に並ぶ灰色の箱をご覧ください。)
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牡の血統のブラックホール
牡犬にとって、伴性遺伝子(訳注:XおよびY染色体上の遺伝子を言う)は、この交配では、白い部分とグレー(縦縞)の部分のみから受け継ぎます。各世代のパーセント数値は、性染色体(XまたはY)がこの交配で牡の子犬に伝わる割合を示します。
ファイン氏は、彼の記事の中で次のように述べています。牡の子犬はその父の母(父方祖母)から性染色体(XあるいはY)を受け取りませんので(図1参照)、最初のブラックホールが2代祖に現れます。同様に、牝の子犬は、父の父(父方祖父)からは性染色体上の遺伝情報を何も受け取りません(図2参照)。
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牝の血統のブラックホール
牝犬にとって、伴性遺伝子(訳注:XおよびY染色体上の遺伝子を言う)は、この交配では、白い部分とグレー(縦縞)の部分のみから受け継ぎます。各世代のパーセント数値は、性染色体(XまたはY)がこの交配で牝の子犬に伝わる割合を示します。
言い換えれば、2代祖の祖先(4頭)の25%は性染色体を子孫に伝えていないということです。すなわち、その子の性別が、どの祖父母からの伴性の遺伝情報が後の世代へ伝わらなくなるかを決めるというわけです。
3代祖になると、牡子犬の祖先の50%はそのパピーに伴性遺伝情報を伝えられないのです。5代祖では、28%の祖先のみが伴性遺伝情報を牡のパピーに伝えていないことになります。(図1参照)
牝のパピーは、2つのX染色体(1つは、父の母からのもので、もう1つは、母からのものです)を持っているので、5代祖の41%が彼女の伴性遺伝情報に影響を与えている確率になります(図2参照)。
成功しているブリーダーは、例外なくその台牝のラインをとても重視しています。フォックスハウンドの名ブリーダーで「ハーダウェイ」タイプのフォックスハウンドを作り上げたベン・ハーダウェイ氏は、強い狩猟本能は牝のラインから由来し、幾つかの身体的特質は牡ラインから由来すると考えています。これは、ハーダウェイのハウンドと同様にクローズブリーディング(自分の系統だけを用いている)をしている私のノルウェイジアン・エルクハウンドについても同じような事が言えます。
母犬は、性格の強さや健全な四肢と持久力に大きな影響を及ぼすように思います。父犬は、聡明さ、頭部のタイプそして、素早い成熟性にともなう特質に大きく影響を及ぼすようです。ある1人のサラブレッド研究者が、20世紀のクラッシックレースのチャンピオン達は、大きな心臓を持っていて、その血統をたどれば、1837年生まれまれの偉大な牝馬ポカホンタスにたどり着くということを発見しました。この牝馬は、偉大な基礎種牡馬エクリプス(現代のサラブレッドの基礎となった名馬)の一族から出ています。エクリプスは1764年生まれで、死後にとても大きい心臓を持っていたことが確認されています。この研究者が調べた事については後日このコラムで紹介するつもりです。
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牝および牝の血統のブラックホール
子犬にとって、伴性遺伝子(訳注:XおよびY染色体上の遺伝子を言う)は、牡であろうと牝であろうと、この交配では、白い部分とグレー(縦縞)の部分のみから受け継ぎます。各世代のパーセント数値は、性染色体(XまたはY)がこの交配で子犬に伝わる割合を示します。
● 他のブリーダーから学ぶブリーダーは、一貫性(均一性)を求めてブリーディングしている他のブリーダーと協力することにより、ブリーディングプログラムを強化することができます。ファイン氏もその1人です。彼は、一群のフォックスハウンドをブリーディングしており、クオリティの均一を最重視しています。一貫性を持たない選択方法は、ブリーディングプログラムにおける全体的な向上の面で最大の障害の一つです。
なるべく少ない数の犬からより良い犬をブリーディングするという、共通の目的のおかげで、わたしはファイン氏とお付き合いを始めることになりました。ドッグショーの世界でも、フィールドの世界でも共通する事はたくさんあるということは明らかですから!
AKCガゼット98年4月
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cavalier@cavaliernet.com