選択の手順 パット・トロッター著/提供:GRCJ




選択の手順(AKCガゼッタ 97年12月号より) By Patricia V.Trotter

正しい選択をすることが繁殖の純粋性を保つのに必須です。
 純血犬の繁殖において、選択は成功の鍵です。人の影響が加わる前は、最も厳しい者、すなわち母なる自然に選択は委ねられていました。自然選択が働き、最も適した動物が生き残り、次世代へ続く遺伝子プールに貢献していました。しかし、人間がこの選択過程に入り込むことによって、多くの変化が続きました。初めに、ハンティング(猟)やハーディング(牧羊)のような、重要な仕事を担う能力を持った犬種が作られました。その後、人はその能力を最高に発揮するブリーディングストック(繁殖用の犬)を選択することを始めました。この期間、ブリーダーは各犬種を、その仕事に最も相応しい形質や特徴が固定された、その犬種の典型的な形を作り上げるまで、精練していきます。もし、「タイプのはずれた」犬が時々優れた仕事をしていたとしたら、それは並外れた精神や作業意欲がその劣った構造を克服したからでしょう。

 最終的に、やはり人間が選択過程に関わってきたために、いくつかの犬種ではショードッグといういわゆる贅沢品とそうではないペットとが作られました。多くの犬種が今日どの段階にあるかを言う必要はないと思います。それゆえに、以前にも増して繁殖犬を選択する際に最善の選択手段を使うことが必須となっています。それが犬種の純粋性を保つ唯一の方法なのです。

一貫して一定の基準で選択する
 初期のブリーダーが、現代のブリーダーより進歩を遂げた理由の一つは、選択の方針が一貫していたからです。また、初期の頃はより少ない形質についてのみ選択を行っており、それゆえ改良の速度が早まりました。つまり、彼らの選択したブリーディングストックはその犬種の目的である仕事を行う上で優れたものであったということです。同種間に変化(バリエーション)が出れば出るほど、繁殖犬を一貫した方針で選択することが難しくなってきました。

 選択過程で考慮すべき形質が増えるほど、全体的な進歩は遅れることになるということを理解するのは重要です。一つの部分を素早く改良するのは可能ですが、その時はたいてい他の形質の進歩は犠牲になるものです。

 もう一点、忘れてはいけないこともあります。特定の形質の改良がどうしても他の形質よりも難しいことがあるということです。もし、一つの形質が多数の遺伝子で決定されるとか、あるいは複雑な遺伝子の作用で決まるときは、不可能ではないにせよ、改良は難しくなります。その形質の遺伝様式(訳注:単純な劣性とか優性とかの、遺伝の様式のこと)があまり分かってないときは、さらに難しくなります。成功を遮るもう一つの壁は、遺伝学的に調和できない複数の形質を組み合わせようとしたときに生じます。あなたの選択過程でこのような不可能な形質を扱ったら、 頭痛の種になるだけではなくて、あなたの遺伝子プールにダメージを与え、望ましい形質まで失うことになるかもしれません。

選択の方法
 ここで、あなたの選択決定を助ける選択の手順方法について述べます。

☆タンデム法
 ある一つの形質に着目して、それを完全に固定しようとするやり方です。ひとたびその系統でその形質が固定されたら、次に2番目の形質を固定しようと試み、それを続けるわけです。悲しいことには、この方法では一度に一つの形質しか固定できませんし、すべての形質を固定する前に時間を使い果たしてしまうかもしれません!また、その第一優先の形質を持っていないからという理由でブリーディングから外すことにより、その犬が持つその他の良い形質を失うという危険もあります。

 この方法は、特定の犬種の絶対必要な形質を固定するという、犬種の発達の初期にはベストな効果が得られると思います。非常に重要な形質を固定するためだけに用いられるべきで、個人的な好みの形質のために用いるべきではありません。なぜなら、固定に成功したものの、それはちっとも重要ではなかったということになりかねませんから。

☆ポイント法
 これは、何人かの非常に成功しているブリーダー達が用いている方法です。その考え方は、各形質に相応しい順番に並べて(その重要さにしたがって)、点数化する方法です。もしあなたの犬種スタンダードがポイントシステム(各部分に重要性に従って点数が付けれらている)を採用していないなら、採用している犬種を参照して、自分なりのポイントシステムを作って選択に役立てると良いでしょう。(ビーグル、グレイハウンド、ブラッセルグリフォン、ボストンテリア、アラスカンマラミュートが、そのスタンダードに点数制を採用している犬種の例です。)あなた自身のポイントシステムを確立するにあたって、最重要な形質に高い点数を、小さな形質に低い点数を与えることです。犬種スタンダードの記述は、その犬種が作られた目的である仕事をするための相応しい型(構造)に高い点数を与 えていることを忘れないでください。ほとんどの犬種において、「美しさのための」形質は、仕事をするために重要なタイプに関わる形質よりずっと重要度は低いのです。

☆最少淘汰法
 重要な許容できない特徴を持った犬をブリーディングプログラムから外していく方法です。望ましくない性格と多くの健康問題(遺伝性疾患)が頭に浮かびます。この方法は、良くない口、良くない肢、タイプから外れた特質などを持った犬をブリーディングプログラムからはずすということを意味します。言い換えれば、あなたがどんなにその犬を愛していても、この最低基準に達していなければ、遺伝子プールに戻さない(=ブリーディングに用いない)ということです。

トレードオフを行う(Making Trade-Offs)
 ブリーディングのためのトレードオフ(ブリーディングに用いる犬を選ぶためのかけひき)を行うことは、ブリーダーとして進歩することに必要ですが、それをを安易にやり過ぎないよう、そしてどの個体があなたの犬種にとって最も利益をもたらすかということを学ぶことに注意を払わなくてはいけません。例えば、あなたの犬種のスタンダードが良く傾斜した肩と短くてまっすぐなパスターンを要求しているとします。あなたは、素晴らしく正しい肩を維持するために、わずかに傾斜したパスターンを許容しないといけないかもしれません。

 ええ、逆の方法も考えられるかもしれません。すなわち、直立した肩あるいは短い上腕を許容することにより、短く真っ直ぐなパスターンを得るというふうに。しかしそれは、犬の運動能力についても妥協することになります。どんなトレードオフは容認できて、どんなトレードオフは容認すべきでないかを知ることが、ブリーダーとして成功するための必須の条件です。さらに、このトレードオフを決定する際に、母なる自然と調和して行っていかなくてはいけないことを認識するのはまた重要です。

 例えば、かわいいBugleAnnie(訳注:犬の名前、たぶんビーグル)が走る上での持久力に欠けているけれども、すばらしい声(訳注:ビーグルにとって声は大事な要素)、目、ハウンド耳、を持っていたとしたら、彼女を遺伝子プールの中に入れるべきでしょうか?機能的な作業犬として適していない中途半端な構成は、たとえ彼女の他の良い部分を得るためであっても、許容して取り入れるべきではないかもしれません。

 実際には、時の流れと共に、犬はその犬種本来の仕事をする必要がなくなったので、責任あるブリーダーは、機能的な形態を犠牲にして表面的な美しさが強調されすぎることを今まで以上に警戒せねばなりません。犬種の真の守り役(その犬種の真の愛好家達)は、タイプ(形態)と健全性(ある機能を果たす能力)の両方が絶対的に必須であることを認識して、その犬種の純粋性を守り続けるべきです。

*私の次のコラムでは、選択の過程での、血統、構成、能力の相対的重要性について研究します。

AKCガゼット97年12月




    cavalier@cavaliernet.com


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