判断を急がないで / ジョン・ギャモン著




キャバリアのブリーダーから子犬を求める方へ

"判断を急がないで"

    初めてキャバリアを飼いたいと思っている素敵なご夫婦が私の家に来られて、ちょうど今帰られた所です。この訪問によって私達と訪問者双方がいかに考えを変えさせられたかを今思い返しています。
  初めて電話をもらった時、彼らはたくさんの事を言いました。まず、繁殖に使えるような牝が欲しいということ。しかしショーには興味はなく、今まで犬の繁殖もしたことがないと言います。彼らは仕事で私の家の近くまで来ているので、「売り物の犬」を見せて欲しいと言いました。私は今お譲りできる犬はいないけど、犬を見て、キャバリアについて聞きたいのでしたらいらしてくださいと告げました。
  彼らは表れるでしょうか?別のブリーダーは彼らに「ショーおよび繁殖用」の8週令の牝が何頭かいて、売ってあげると言ったそうです。仮にもし来てくださったとしても、私はうまくレクチャーし、アドバイスできるでしょうか?
  彼らが訪問すると言っていた朝が来て、彼らはちゃんとやってきました。私達はキャバリア達を回りに置いて話しました。私達は、ペットタイプとショータイプの違い、リミッテドレジストレーションを使うことがなぜ大切かなどを何時間も話しました。私達はキャバリアという犬はとってもゆっくり成長するということ、歯の噛み合わせは18ヶ月までは変化する可能性があること、マーキングとかブレンハイムの柄とかはショー用の犬にとってさほど重要な問題ではないということなども話しました。
  彼らは遺伝性疾患のチェックの重要性についても理解してくれたようでした。そして「ではどうして8週齢の子犬でショー用かブリーディング用とか決めることができるのですか?」と質問しました。感傷的にならないようにしながら、私は、「一頭の犬をある人にブリーディング用として売るという事はその人に20年間(そして何世代も)大変な仕事と勉強をしてもらうと いうことなんです。ブリーディングには楽しいこともたくさんありますが、それ以上の苦労と落胆も伴うものなんです。」と語りました。子犬を育てる苦労、正しく社会化することの重要性、そしてそれぞれの子犬を生涯大切にしてくれる家に送り出す責任についても説明しました。彼らは床に座って私のキャバリア達と遊び、その間私はいろんなことを話しました。スタンダードについて、キャバリアのクラブについて、倫理について、血統について、犬種の歴史や、キャバリアの魅力についてなどを。   なぜブリーディングするのか(そしてなぜするべきでないのか)について話し合い、どんなに最良の犬でもブリーディングするとがっかりするような結果になることもあることも説明しました。とりわけ、これだけ犬が多すぎる現状で、さらに犬を繁殖するからにはいかに責任が伴うかということを強調しました。

  一方、私達もまた、このご夫婦からいくつかの事を学びました。
  彼らは以前はドッグショーに興味があったのです。しかし「プロが引かなければ勝てない」「素人が出したって無理」というようなことを聞かされたそうです。また、「とても素晴らしい子犬」を買い手の事を何も聞かず、売った後のことも心配しない様子で売ろうとするブリーダーの態度が良く理解できないとのことでした。後で調べた所、このブリーダーは今までに500頭ものキャバリアをブリーディングしているのですが、チャンピオンになれた犬はそのうち2、3頭であることがわかりました。
  これは明らかにふさわしいブリーダーではないようなんですが、彼らは全くの初心者なので、そのような疑問についてそのブリーダーに質問してみる勇気はなかったのです。このご夫婦は沢山の疑問の答と、キャバリアに関する出版物のリストを手にして帰られました。
 彼らは私の犬種に関する関心を理解してくださいました。そして彼らは犬種を破滅させる側ではなく、関心を払う側になると私は確信しました。私は喜んで彼らに私のキャバリアの一頭を譲りたいと思いました。それまでに彼らはするべきことをし、良いキャバリアファンシャーになっていることでしょう。彼らは彼らにとってふさわしいキャバリアを手に入れるためにはしばらく待たなくてはいけないし、その間にいろいろと学ばなくてはいけないことを知りました。

  もし私が初めて電話をもらった時にそっけなく断ってそのままだったらどうだったでしょう。もしかすると彼らは無責任な素人ブリーダーの仲間入りをし、また新たな質の低いキャバリアの長いラインを作り出していたかもしれません。また、もし彼らが私の家を訪れなかったらどうだったでしょう?彼らは私の事をショーやチャンピオンにしか興味がないお高くとまったブリーダーとして心に刻んでいたかもしれません。その日の朝、私は犬達のグルーミングをし、調べ物をし、週末のショーの結果を見るつもりでした。
  これらはブリーダーの仕事の一部です。ブリーダーの仕事には時間と忍耐と努力が必要です。しかし、この日の朝、このご夫婦とお会いして話したことは、私にとって、私のキャバリアにとって、犬種にとって、大きな報いをもたらしました。私は光栄にも今まで素晴らしい何人かのブリーダーの先輩に指導をしてもらいました。彼らの努力にならって、初心者を指導していくことが私の恩返しだと思っています。だって、ひょっとしたら、将来私が今初心者である人から素晴らしい子犬を買うことだってありえるんですから!


   *この記事はAKCガゼット96年10月号のコラムのキャバリアコーナーより抜粋したものです。筆者はテネシー州在住のキャバリアのブリーダー、John Gammon氏です。




    cavalier@cavaliernet.com


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