ウルフマンコレクションズ
By Margaret Gibbs AKCガゼッタ96年6月号より
人間が犬社会における叱り方や優位を示す行為、例えば、うなじを掴んで揺すぶること、仰向けにひっくり返す事などを模倣することは、しばしば犬をトレーニングする時に深刻な問題を引き起こします。人間が、犬のような足や牙、尻尾、五感を身につけ、犬の微妙なゼスチャー、例えば毛を逆立てたり、耳やマズルの巧みな動きなどを理解する能力を得ない限り、私達は人間として振る舞っていたほうがいいのです。狼を演じることは危険です。
最近、ある中年の夫婦が私達のパピートレーニング教室に4ヶ月の牡のラブラドールレトリバーを連れて参加しました。その子犬は彼らの手や腕を何度も噛み付いたとのことでした。その夫婦の話してくれたことは良くある話でした。彼らの主治医の獣医は彼らに、子犬が悪いことをしたり、物を噛んだりした時は、子犬の母犬のように振る舞って、子犬のうなじを掴んで揺すぶるようにアドバイスしたのです。そして、診察中にその方法をデモンストレーションして見せました。その時は子犬は服従姿勢を示し、なんの問題もありませんでした。
その後、この夫婦が教わった「狼男」法を実際にやろうとした所、子犬は動物病院で見せたような服従姿勢を見せるどころか、抵抗して彼らに噛み付いたのです。1、2週後、その夫婦はまたその動物病院に行き、事情を話すと、その子犬は元々性格が悪いのだと言われました。
悪いのは子犬の性格ではなく、その夫婦が与えられたアドバイスなのです。その子犬は遺伝子によって、活動的で恐れを知らない犬になるよう運命づけられた犬でした。
彼はすぐさまその夫婦を「未熟者の犬達」と認識し、彼らの優位に立とうとしたのです。
その子犬はその夫婦がへたくそな偽の母犬を演じることをやめた途端、噛むのを止めました。彼らは適切なおもちゃを与えることにより物を噛むことを回避させ、ごほうびを使いながら簡単なコマンドを教え、噛みそうになる前に、リードとカラーを使ってそれをやめさせる方法を学びました。人間の手を、見せかけの犬の顎のように使うのではなく、人間の手として使うことによって問題は解決されたのです。
それからこの夫婦は、この子犬が私の牡のラフコリーのレンジャーに優性を示す行為を取った時、本物の犬はどう対応するかを見ました。レンジャーは優しい、年寄りの犬ですが、子犬が噛み付くためのおもちゃではありません。
その夫婦が指から肘にまで及ぶ噛み傷の跡を私に見せている時、その子犬はレンジャーに飛びつき、レンジャーの首の毛に噛み付いて引っ張りました。
老犬レンジャーはその時眠っていました。はじめは彼は痛そうな悲鳴をあげながら、我慢していました。そしてじっと、子犬の動きを静観していました。そのやんちゃ坊主は、簡単に勝てたことを喜び、再び飛びついてうつぶせになったレンジャーにまたがり、優位を示す行為を示しました。子犬がうなって、彼の耳を噛みはじめた時、レンジャーはもう十分だと思ったようです。レンジャーは吠え、まだそんなパワーがあったのかと思うような速さで飛び上がり、すごい顔をして歯をむき出し、唸り、喉の下にこの不良少年を押え込みました。
子犬はごつんと床に叩きつけられました。レンジャーは子犬にまたがり、子犬の喉を歯で固定しながら唸り、深い息を子犬の首に吹きかけていました。驚いた子犬は泣き声を上げ、あおむけのままおしっこをしてレンジャーのお腹を濡らしました。
そしてレンジャーは子犬を開放し、自信に満ちた落ち着いた態度で、不快な表情をしながら、自分の毛布の上に戻って座りました。子犬は、振り回されたけど傷つけられませんでした。そして服従した様子でレンジャーに這って近づいていき、その長老のマズルをぺろっと舐めました。
レンジャーはその謝罪を冷静に受け入れました。たぶん「だれがこんなくそガキを育てたんだ?」と思っていたことでしょう。
飼主の夫婦はショックを受けていました。「何が起こったのですか?」と彼らは私に聞きました。私は目上の犬をおもちゃのように扱った犬に対して犬がどのように矯正するかを見ただけですよと答えました。レンジャーが見せた矯正法は、人間が同じようにやってみても決して効果的ではないでしょう。
別の生徒のアンジェラは、犬の行動の厳しい一面を自分の犬から学ぶことになりました。アンジェラはブリーダーから、彼女のシェパードを一日に何度も床に押さえつけるように言われました。その理論は、子犬が力を抜くまで仰向けに押さえつけることは、子犬の服従心を発達させるというものでした。
アンジェラの子犬は、抵抗もしませんでしたが、力を抜くこともしませんでした。そして開放すると、体を震わせて静かに回りを見回していました。子犬が7ヶ月になった頃から、仰向けに押さえつけると徐々に反抗するようになってきました。それで、アンジェラはもっと強く押さえつけるようにしました。11ヶ月になった時には、アンジェラは勝つためには、何回か噛まれなければいけなくなりました。
実際の犬の世界では、上位の犬は、年齢と共に上位に立とうとする他の犬の挑戦を受けてたたなくてはいけません。アンジェラは、明らかな「偽物の犬」によって服従を要求されることを止めさせるまでに自分に力が付いてくるのをずっと我慢して待っていたのです。そしてある日、ついにアンジェラは、本物の犬が弱い挑戦者から絶えず悩まされることを永久にやめさせようと決意したときに取る行動の一つを見せ付けられたのです。
この問題を解決するために、アンジェラは人間の指導者として振る舞うことにしました。彼女のシェパードはオビディエンスが好きで、ごほうびをもらうのも好きでした。アンジェラはその犬に絶え間なく仕事を与えました。ドアの前で静かに待つこと、新聞を取ってくること、お客さんにあいさつすること、などなど。アンジェラは人間の知恵を使って、その犬に服従心を培わせたのです。アンジェラとその犬は今はかけがえのない友達であり、アメリカとカナダの両方で、オビディエンスとトラッキングのタイトルを獲得しました。
犬達というのはボディランゲージを鋭く観察しています。そして、人間の権威というものを認めて人と接します。この人間の権威のオーラ(醸し出す雰囲気)があるゆえに、トレーナーがリードを持った途端にまるで奇跡のように犬が従ったり、家族の「問題犬」が、ブリーダーや獣医の命令にはいとも従順に従ったりして、その家族が驚きのため息をつく、というような事が起こるのです。もしこの人間の権威の形を、犬を服従させるために、うなじを持って揺すぶる、あるいは他の「狼男」法として使ってしまうと、犬達はその方法の意味を正しく判断できないのです。
「狼男」法は犬を服従させるものではありません。犬は主人と認めた人間に従うことを選ぶのです。
権威と貫禄というものは、経験や、洗練された犬の扱い方、犬に対しての誠実さ、などによって培われていくものです。犬はその権威を尊敬します。それは犬が受け入れるもので、押し付けられるものではないのです。
犬はまた、人間の不完全さと不確実さも認めています。初心者は犬の行動のニュアンスが良くわからないため、犬の態度を誤解したり、タイミングを間違ったりします。そして不安になった飼主が、偽物の犬になろうとするときは彼らはいつも警鐘を鳴らしているのです。
自信の強い犬はもっと強くなるでしょう。もともと、服従的で気の小さい犬は、一生を恐れと不安の中で過ごすことになるでしょう。
私達は犬の行動を観察し、学ぶことはできますが、しかし決して、私達は犬のボディランゲージや気持ちを真似することができると考えるべきではありません。
鏡は犬達がすでに知っている事を教えてくれています。そうです、生物学的に私達は犬ではないのです。
映画の中では、満月になると狼男は脅えた人間を騙すかもしれません。しかし狼男は決して狼は騙しません。
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