愛犬の健康管理
愛犬の健康を管理し、疾病を予防し、
可能な限り健やかな日々を送らせてあげることは
飼い主の責任の一つです。
病気の予防
愛犬に必要な疾病予防は
1)ジステンパー、肝炎、パルボ等のウイルス性感染症の予防
2)フィラリア症(蚊が媒介する寄生虫)の予防
3)狂犬病の予防
です。これらは犬の種類、飼育場所に関係なくすべての犬に必要と言えます。これらの病気は感染すると治療が大変で費用もかかり、死亡する事も多いのです。予防が可能な病気で死なせてしまうことほど悲しいことはありません
これらの予防をいつどのように行うかは、主治医の先生の指示を仰いでください。子犬でも成犬でも新しく犬を飼ったら、まず動物病院に連れていきましょう。そしてこれらの病気の予防についての説明を聞いてください。わかりやすく説明されたパンフレット等をもらえるかもしれません。
・ジステンパー等のウイルス性感染症のワクチンは子犬の時は何回か接種する必要があります。
子犬は、これらの病気の抗体を母犬からもらっています。(ですから生後間もない子犬は感染から守られるのです)これを移行抗体といいますが、この抗体が残っている時はワクチンを打っても中和されてしまい、効果がありません。移行抗体がいつ切れるかは、母犬からどれくらい抗体をもらっているかによって違ってきますし、特殊な検査をしない限りその時期はわかりません。
早いとだいたい生後50日くらいで切れはじめるので、この頃最初のワクチンを打つことが多いです。その後3週間から一ヶ月間隔で追加接種していくのが望ましいとされています。ジステンパーや伝染性肝炎の場合、生後90日でほとんどの子犬は移行抗体がなくなると言われています。ですが、パルボウイルス感染症の場合は、生後150日でもまだ抗体が残っていてワクチンが効かないこともあります。
ですから、子犬の時の最終ワクチンはジステンパー、伝染性肝炎は生後90日以上、パルボウイルス感染症は生後150日以上で接種することをお勧めします。また、ワクチンは体調のいい時に接種するようにしてください。腸内寄生虫(回虫等)がいるとワクチンの効果が弱まる時があります。
子犬の時は、移行抗体との関係で、まめに接種していても無防備になってしまう時期(つまり移行抗体が感染は防御できないけど、ワクチンには干渉するというレベルにある場合)が存在する可能性があります。ですから、最終ワクチンが終わるまではむやみに外に出すのは避けたほうが無難です。
(しかし子犬の社会化のためには、注意しながら、安心できる友人の犬に会わせたり、庭で遊ばせたり、外を見せたりすることも必要かもしれません。あまり極端に考えないようにしてください。)そして一番大事なのは子犬の健康状態です。
人間が風邪を引く場合を考えてみると理解できると思いますが、感染症というものは体調を崩した時、ストレスを受けた時等が一番感染しやすくなります。(免疫力が低下するのです。)健康な状態なら多少のウイルスに接触しても感染しないことが多く、逆に体調を崩していると、わずかなウイルスに暴露されただけで感染してしまうことがあります。
ですから、良い環境で育てられ、親元で十分に成長した健康な子犬を手に入れ、清潔な環境で、規則正しく、適切な食餌を与え、ストレスを与えないように育てましょう。子犬が体調を崩す原因で一番多いのが、「いじり過ぎ」です。特にお子さんのいる家庭は気をつけてください。子犬は一日の大半を寝て過ごします。寝ている時に揺すって起こして遊んだり、抱き上げたり、いつまでもかまっていて寝かせなかったりするなら、子犬はとたんに体のリズムを壊します。
・フィラリア症は、蚊に刺される環境にいるなら、予防しないでおくとほぼ100%感染してしまうと言っても過言ではありません。
室内犬であっても散歩中など、感染の危険はあります。感染しても最初の何年かは症状を出さない場合が多いので、「うちのは大丈夫」と気に留めない飼い主さんもいますが、放っておけば毎年蚊に刺されて心臓の中の虫は増えていき、そのうち様々な症状を出すようになっていきます。
大きな血管に虫が詰まって、急激な循環障害に陥って死亡する場合もありますし、咳が出る、疲れやすい、腹水が溜まる、腎機能が低下する、といった慢性経過をたどる場合もあります。どちらにしても犬はとても苦しみます。成虫を注射で駆除したり、手術によって成虫を取り出したりする治療もありますが、犬への負担も大きく、かなりのリスクがありますし、完治させるのはかなり難しいです。
フィラリア症は月に一度の内服薬で予防できます。知っておいていただきたいことは、この予防薬は蚊に刺されることによって体内に入ってきたフィラリアの幼虫を殺していくものですが、体内に入ったばかりの幼虫には効きません。感染後30日から60日くらいの幼虫に効果があります。
(感染後幼虫が心臓に行くまでには3ヶ月かかります。)ですから、蚊がいなくなったからと言ってすぐに予防薬の投与を止めてしまうのは危険です。蚊の終息から2ヶ月後まで投与してください。フィラリアの予防薬には錠剤、粉剤、チュアブルタイプ(四角いビーフ味のお薬)があります。注射薬や液体の薬というのは正規のフィラリア予防薬にはありません。
投与期間については主治医の先生の指示に従い、忘れずに最初の年から毎年予防しましょう。(生後2ヵ月くらいから始めてください)蚊は毎年発生するのですから。
・狂犬病は日本においては長い間発生していません。
しかし海外からいろんな動物が輸入されていますから、いつ何時発生してもおかしくありません。これは人にも感染し、ほぼ100%死にいたるとても恐ろしいウイルス感染症です。狂犬病予防法という法律によって飼い犬には毎年一回の予防接種を受けさせることが義務付けられています。(生後3ヶ月以上)春に行われる集合注射で受けることもできますが、動物病院で接種してもらうことも年中いつでも可能です。(その場合証明書を動物病院でもらい、市役所等に提出して鑑札をもらいます。)
愛犬が病気になった時
犬もいろんな病気になります。事故で怪我をする時もあります。一番大事なことは信頼できるホームドクターを見つけ、そのドクターと良い関係を保つことです。ドクターの話しを良く聞き、わからない事は質問し、そしてその指示を守りましょう。素人判断は危険です。
しかしどんなドクターも万能ではありませんし、得意・不得意もあると思います。どうしても治療法に納得がいかない、良い結果が得られない、というような場合は転院したり、設備の整った大きな病院や大学の付属病院を受診することも必要かもしれません。しかし最初からあちこちはしご受診したり、何件もの病院に電話をして意見を聞いたり、市販の動物薬や人間用の薬を自分の判断で併用したりするのは良くありません。
また、最近は書籍やインターネット等で犬の病気についての情報や知識がたくさん得られますが、それらの情報は、あくまで一般論であって、個々の犬には当てはまらない場合もありうるという事を忘れないでください。情報を得ることは有益なことですが、時として過剰な情報は混乱を招き、それに振り回されることにより、ドクターに不要な不信感を持ったり、ドクターとの関係を損ねてしまう時もあります。
インターネットや電話等の健康相談は実際の犬を診ないで行われるのですから、限界もあり、答えるドクターも一般論的な答え以上のアドバイスをすることは難しいと思います。ですから、そのような情報やアドバイスはあくまでもセカンドオピニオンとして受け止め、冷静な判断をしましょう。
診察や治療を怖がり、暴れる犬、飼い主が保定できない犬、というのはとても困ります。十分な診察や治療が出来なかったり、ちょっとした処置にも鎮静剤や麻酔が必要となり犬に負担をかけることにもなります。ですから、子犬の時から体を触られる事に馴らしましょう。
ブラッシングの際に、耳の中を見たり、口を開けたり、尻尾を持ったりして、じっとしていたらうんと誉めてあげるのです。基本的な服従訓練も大切です。また、衛生ボーロやビオフェルミンの錠剤等を使って、お薬を飲む練習をしましょう。やり方はかかりつけの先生に習ってください。病気の時薬を飲ませられないというのは困りますから。
また、時として入院が必要になる時があるかもしれません。当然犬は入院用の犬舎に入れられます。そんな時、クレートに慣れていない犬はそれだけで多大なストレスを受けることになります。いざという時のためにもクレートトレーニングは必要です。(クレートトレーニングの記事を参照)
家庭でできる健康管理
1)食餌
なんといっても適切な食餌は健康管理の基本です。詳しくは食餌のコーナーをお読みください。
2)サプルメント
人間と同じように、最近は犬用のサプルメント(補助食品)が多く市販されています。そして人間の場合と同じように、その効果には個体差もあり、気休め程度の時もあるでしょう。多くのサプルメントは無害なものであり、過剰に与え過ぎても弊害はないと思われますが、カルシウム等のミネラル類や脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・Eなど)等は過剰投与されると害をもたらします。特にカルシウム剤の添加には気をつけてください。ほとんどの市販のドッグフードには十分な量のカルシウムが含まれていますから、それ以上添加すると過剰になり、かえって吸収されにくくなります。
3)体重
私達は自分の健康管理のためにまめに体重計に乗りますね。犬の体重も時々計ってあげましょう。計るのは簡単です。自分で愛犬を抱っこして体重計に乗り、自分の体重を引けばよいのです。またたいていの動物病院には体重計の付いた診察台がありますので、受診の時に計ってもらいましょう。そしてだいたいどれくらいがベスト体重かを知り、増え過ぎたり減り過ぎたりしているなら食餌の調整をしましょう。
股関節形成不全や膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニア等の関節疾患や心臓疾患がある子は特に肥満に気をつけ、少し痩せ気味という状態を保つのが良いでしょう。
4)運動
適切な運動は犬のストレスを発散させ、良い体調を保つために大切です。無理のない運動を定期的に楽しく行いましょう。活動的な犬の場合、自転車やバイクでの運動も便利ですが、無理に走らせ過ぎたりしないよう犬のペースに合わせてください。
またパピーの場合は無理な引き運動は関節を痛める原因にもなりとても危険です。人に迷惑のかからない安全な場所での自由運動やボール投げも楽しいものです。夏場は特に気をつけてください。アスファルトが熱くなっているかもしれません。犬は汗をかきませんから、口で体温調節をします。照り返しが強い場合は温度の高い空気を吸い込むことになり、熱射病になる危険があります。夏場は早朝あるいは夜に運動に行くのが無難です。
肥満している犬や心臓疾患のある犬の場合、急激で過激な運動は危険です。また、激しい運動を短時間行うよりゆっくりとした散歩を長めに行うほうが、減量効果は高いそうです。関節疾患がある犬は、無理な引き運動やジャンピングは避けましょう。しかし筋肉を強くするために無理のない運動を続けることは大事です。水泳は四肢に負担をかけないで全身運動ができますから関節疾患の子にもお勧めです。
5)暑さと寒さ
犬種によって暑さや寒さにとても弱い犬がいます。セントバーナード、ニューファンドランド、バーニーズマウンティンドッグ、アラスカンマラミュート、シベリアンハスキー、ゴールデンレトリーバー等の北方系の大型犬は特に暑さに弱いですから、夏場は室内でエアコンをかけた状態か、あるいは外の犬舎で飼うなら、十分な暑さ対策が必要です。また、どんな犬種であっても夏場は絶対にエアコンをかけていない自動車の中に置き去りにしないでください。ほんの短時間でもあっという間に熱射病になります。
短毛の小型犬やボクサー、ドーベルマン等は寒さに弱い犬です。犬用のヒーター等を利用すると良いでしょう。大型犬の場合は養豚用のマットも便利です。外飼いの場合は食餌のカロリーを普段より増やしてあげる必要があるかもしれません。
6)グルーミングと衛生
犬の皮膚やコートはできるだけ清潔に保ちましょう。毛玉にしたり、皮膚が湿ったり汚れた状態にしておくと皮膚病の原因となります。ブラッシングは子犬の時から馴らし、定期的に行ってください。全身をグルーミングすることにより皮膚の異常も早めに発見できます。丁寧なブラッシングにより埃や砂などの汚れはかなり落ちます。
たまのシャンプーよりも、まめなブラッシングのほうがずっと大切です。また、毛がもつれた状態でシャンプーをするのは、さらにもつれさせるだけですから、シャンプー前には必ず全身のブラッシングをしましょう。シャンプーとリンスは犬用の良質な物を使い、すすぎを十分にすることを忘れないでください。皮膚にトラブルのある犬はその体質に応じた薬用のシャンプーを使用すると良いでしょう。(かかりつけの先生に相談してください。)
クレートや犬舎、食器類はこまめに掃除し、時々消毒(日光消毒や、消毒剤などで)しましょう。敷物もまめに洗濯してください。
耳は市販のイアーローション等を耳の中にいれ、耳道をマッサージし、犬にブルブルをさせて、外側をぬぐうのが、良いやり方です。綿棒を無理に突っ込んで擦ると耳道をかえって傷つけてしまうかもしれません。シャンプーの時は耳の中もシャワーで良くすすいでください。耳に水が入るのは心配ありません。シャンプーの成分が残ったままだと炎症の原因にもなります。
爪切りは外を良く散歩している犬ならそれほどまめに切る必要はないかもしれませんが、前足の親指と後足の狼爪(ない犬もいます)だけは時々切ってください。放っておくとぐるりと一周して肉に突き刺さることもあります。
7)ノミやダニ
これらの外部寄生虫は、衛生的な環境で飼われている犬でも、散歩などで寄生してしまうことがあります。ノミは痒みやノミアレルギー性皮膚炎の原因となります。たった一匹のノミがいるだけでも敏感な犬はものすごく痒いのです。家の中に持ち込むと畳や絨毯にも卵が落ちて繁殖し、人間も刺される場合もあります。瓜実条虫(さなだ虫)という腸内寄生虫も媒介します。ダニは恐ろしいバベシアという原虫の感染症の原因にもなります。
これら外部寄生虫を駆除する製品は、首輪タイプ、スプレータイプ、スポットタイプ、シャンプーなどがあります。内服、あるいは注射でノミのライフサイクルを絶つという製品もあります。確実な効果を持ち、かつ安全性の高い製品を選びましょう。かかりつけの先生に相談してください。
8)スキンシップと愛情
ストレスと体の免疫力には密接な関係があります。どんな犬でも人とのスキンシップを必要としています。毎日長時間放っておかれたり、人と触れ合う事が少なかったり、虐待されている犬は、人間が思う以上にストレスを感じているはずです。できるだけ犬と共に過ごし、話し掛け、愛してあげてください。そうすることにより、犬の体調の変化にも早めに気が付いてあげれるはずです。
避妊・去勢手術について
「かわいそう」「自然に反すること」等の理由で、ためらう方も多いと思います。確かにどんな手術でもリスクはゼロではありませんし、病気でもないのにメスを入れるのは、ためらわれると思います。手術するかしないかは、飼い主が決定することです。犬のためにはどちらがいいのか、熟考して、後悔のない選択をしてください。
人間は生殖本能を理性でコントロールすることができます。そしてすべての人は望むなら誰でも子供をもうける権利があります。同時に人間の場合は、親に生まれた子の扶養義務がありますし、例え親が育てられなくても、すべての子供には生きる権利が与えられます。しかし犬は本能を自分でコントロールすることはできません。そして生まれた子犬は犬だけでは育てられないし、すべての子犬を一生扶養する飼い主もほとんどいないでしょう。さらに飼い主のいない犬は法の元で処分されることになっています。ですから人間と対比して考えることは間違っています。
生殖本能は、犬が家庭犬として暮らす上では不要のものであり、弊害となることも多いのです。他人や他の犬に迷惑をかけてしまう場合もあります。牡犬は発情中の牝犬の匂いを嗅げば、その事で頭が一杯になり、飼い主がコントロールできないこともしばしばです。特に、一度でも交配を経験した牡は益々その欲求は強くなります。牝犬も発情中は精神的に不安定になりますし、いつ何時牡犬が侵入してきて交配してしまうかわかりません。
また、不妊手術をすることにより、犬に多発する子宮蓄膿症(この発生率は出産経験のあるなしには関係ありません。)、生殖器の腫瘍、生殖器の感染症、乳癌(犬において最も好発する腫瘍。一回目あるいは二回目の発情前に手術するとこの発生率は極めて低くなることがわかっています。)、前立腺肥大などを永久的に予防します。
手術の時期等については、信頼できるドクターに相談してください。