ブリーディングについて考える



ブリーディングの頻度

牝犬は2年に一回くらいの頻度でブリーディングされるのが望ましいと言えます。また、2才以下の牝犬はブリーディングすべきではありません。2才を過ぎて初めて迎えるシーズン(発情)が初めてのブリーディングに最適かもしれません。犬種によってはもう少し後のほうがいい場合もあります。このくらいになると牝犬は精神的にも落ち着いて来ますし、身体的にも完全に成熟しています。

股関節形成不全が問題となる犬種においては多くのブリーダーは証明書が発行される2才以上になるまで待ちます。 ブリーディングの頻度を多くしすぎないことは重要です。少なくともブリーディングとブリーディングの間に一回は発情を見送ってください。そうする事によって牝犬は体を休ませ、体力を回復することができます。頻繁にブリーディングされている牝犬は弱い子犬を生むことが多くなりますし、それは牝犬自身の体にも良くありません。

牡犬も、当然必要な遺伝性疾患のクリアランスを持っているべきです。つまり牡犬も多くの犬種において、2才までは交配に用いないほうが良いということです。牝と違って、牡はいつでも交配ができるわけですが、2才過ぎまで待ったからと言って悪いことは何もありません。

通常、交配の頻度が問題となることはありませんが、しかし数日に渡って毎日交配をすると精子の質や濃度に影響を及ぼすことがあります。しばしば交配に用いられる種牡は、最高の食餌と健康管理が必要です。



妊娠および出産後の牝犬の管理

交配前にすべてのワクチンは済ませておきましょう。妊娠後期の3週間ほどは高カロリーの食餌を与える必要があるかもしれません。(しかし肥満させないようにしてください。)パピー用のフードは妊娠後期と授乳期の牝犬にも適しています。

妊娠中は時々異常がないか獣医師に診察してもらうといいでしょう。母犬の病気や感染症は子犬に影響を与える可能性があります。難産は良く起こり得ますし、犬種によっては、自然分娩ができないことは普通である場合もあります。出産時は緊急事態となるかもしれないということを頭に入れておいてください。

授乳中の母犬には、子犬の数にもよりますが、普通、いつもの食餌の量の3倍くらい与えることが必要となります。また、授乳中の母犬のコートが抜けることは異常ではありません。



子犬の世話

お産の前に、清潔で適切なサイズの産箱を用意しましょう。大型犬の場合、母犬が子犬を押しつぶさないように工夫された産箱(市販されています)を利用するのもいいでしょう。その中には新聞紙を細く裂いたものなどを厚く敷き詰めると良いでしょう。そうすれば汚れたらその部分をすぐに取り替えることができます。タオルケット、バスタオルなどを敷き詰めてもいいでしょう。

生まれたばかりの子犬は、体が冷えないようにする必要があります。子犬は母親や兄弟との接触によって暖を取ります。冬場は産箱にヒーターを置いたほうがいいかもしれません。ただし熱すぎると、母犬が子犬を抱きたがらなくなる事もありますので注意してください。体温が下がってしまっている子犬がいたらお乳を無理に飲ませてはいけません。

子犬は体温が下がると鳴き続け、尻尾を両足の間に巻き込んでいるはずです。健康な子犬は喉を鳴らすように鳴き、お乳を飲んでいる時は尻尾は真っ直ぐに伸びているはずです。体温が下がった子犬は服の下で抱いて暖めてください。一番いい方法は別の箱にヒーターを入れてその上にタオルを敷いて子犬を入れてあげることです。熱すぎないように注意してください。

また、子犬達がお互いにくっついて鳴いているなら室温が低すぎるのですし、バラバラになって寝ようとするなら室温が高すぎるのです。 子犬の数が多いなら、すべての子犬をしっかり育てるためには補乳が必要になるかもしれません。犬によっては母乳だけでたくさんの子犬を育てられる場合もあります。哺乳する場合は、生後2週以下なら、4時間おきに行う必要があります。質の良い犬用ミルクを使ってください。哺乳瓶を上手く吸うことができない子犬にはカテーテルを使って哺乳しなくてはいけないかもしれません。

狼爪の切除あるいは断尾をする場合は、遅くても生後3週間までに行ってください。大きくなると傷口も大きくなるし痛みも強くなります。 産箱の中は常に清潔に保ってください。最初の2週間はたいていは母犬が子犬をきれいにしています。しかし敷いてあるタオルや新聞は少なくとも一日2回は取り替えましょう。3週を過ぎると子犬達は自分で排泄し、母犬も子犬の排泄物を始末しなくなってきますから、さらにまめに掃除をしなくてはいけません。 4週になると子犬達は活発に動くようになってきますから、産箱よりも広い場所が必要になります。大型のサークルや、子犬を安全に放せる囲われた場所が必要です。

大型犬なら3週目、小型犬なら4、5週目くらいから離乳食を与え始めます。良質のパピーフードをお湯でふやかしたものを与えると良いでしょう。最初は牛肉の赤身のミンチ等を使う人もいます。最初は少しづつ口の中に入れてあげます。だんだんと食べかたも上手になっていきます。特に大型犬で子犬の数が多い場合は、しっかり離乳食を食べさせることで母犬の消耗を防げます。一日3〜4回与えます。

6週目までには駆虫も済ませ、そろそろ一回目のワクチンを打ち、また眼や耳、心臓等に異常がないか、睾丸が降りているか等をチェックしてもらいましょう。 またこの頃から子犬の社会化が重要です。話し掛けたり、遊んであげたりして、フレンドリーな子犬にしましょう。7週目くらいには子犬を予約している人に見に来てもらい、契約書などの書類も用意しておきましょう。新しい飼い主さんのために子犬の写真も撮っておいてあげるといいですね。

これらの事は、まったく何のトラブルもアクシデントもなかった場合の事です!それでも多大な時間と労力が取られます。片手間でできることではありませんし、日中誰もいない家庭では無理です。さらに、子犬に先天的異常が見つかったら?パルボやジステンパーに感染したら?子犬が死んでしまったら?母犬が感染症にかかったり、乳腺炎を起こしたら?母犬が死んでしまったら?......ブリーディングにはこのようなリスクは付き物です。あなたは対処できますか?



子犬を渡す

子犬が生まれたら、子犬の行き先について考えなくてはいけません。多くの人が「友人や親戚が子犬が生まれたら欲しいというので」という理由でブリーディングします。しかし多くの場合、実際生まれるとそのような約束は反故になるようです。

生後6週くらいになると、ベテランのブリーダーでさえ、なんでこんな大変なことをしているんだろうと思う時があります。子犬達はぞろぞろとあなたを追いかけて走り回り、好奇心旺盛で、どこでも探検したがります。良いブリーダーは、子犬達に良いスタートを切らせたいと思いますから、しっかり社会化もしなくてはいけませんし、とにかくやるべき事が山ほどあります。

8週目には、新しい家に送り出す準備を整え、万全な状態で新しいオーナーに渡します。 単に「子犬が欲しい」という人に渡すのではなく、良い家庭を探さなくてはいけません。そのためには離れた地域の人にも譲らなくてはいけないこともあります。(近郊だけで子犬の数だけ良い家庭が見つかることはあまりありません。)譲った子犬がいつの日か知らないうちに捨てられたり、あるいは安易なブリーディングに使われてその子犬たちが不幸な運命をたどるような事がないよう、さまざまな条件を文書にして契約書を取り交わしましょう。

大きくなっても何頭が残ってしまったらどうしますか?子犬が何頭かが、譲った先の都合で戻ってきたらどうしますか?そういう場合それらの子犬を別の良い家庭が見つかるまで世話をすることは可能ですか?



種牡について

まず始めに知っていただきたいことは、人々が交配したいと思うようなトップクオリティの種牡というのはどこにでもいるものではありませんし、そのような犬を得ることは簡単なことではありません。真剣なブリーダーは国中を探して自分の牝にベストと思われる種牡を選ぶのです。ですから、優れたクオリティを持ち、それがショー等で客観的に評価されている必要があるでしょう。

種牡は良いコンディションであるべきです。そしてその犬種に多い遺伝性疾患を持っていないことが証明されているべきです。また、その犬種に相応しい、良い性格を持っていて、体型的にもその犬種のスタンダードに沿っているべきです。ショーや競技会に参加し、実績を上げることは、これらの事を公的に証明する手段となります。

交配の時は牝犬を預からなくてはいけないことが多いです。遠方から牝犬が送られてくることは良くあることですから、そういう場合は1週間ほど牝犬を預からなくてはいけません。そのためのスペースや設備が必要です。あなたは他人の犬を責任持って預かり、管理することはできますか?

人間が交配の介添えをしなくてはいけない時もあります。犬種によっては犬だけでの自然交配が難しい場合も多いです。すべての犬が交配のやり方を知っているわけではありません。特に初めての交配の場合はそうです。もしどうしても交配がうまくできなかったらどうするか、という事を事前に牝犬のオーナーと取り決めておくべきです。次の発情の時再度無料で交配に応じるという取り決めが一般的のようです。

(不受胎の場合も)交配を申し込まれたら、相手の牝犬の血統を調べ、あなたの牡犬と血統的に合うかどうか検討しましょう。また牝犬の遺伝性疾患のクリアランスについても確認し、健全性が証明されていないなら交配は断るべきです。生まれる子犬の良い点も悪い点も、種牡によるものと考えられることが多いですから、良い結果が期待できるのかどうか慎重に検討しましょう。

また、特に牝犬のオーナーが初心者の場合、生まれた子犬の世話や、行き先、子犬への責任について話し合い、必要ならアドバイスをあたえましょう。牝犬のオーナーが、子犬が生まれたものの、結局どうしていいかわからず、牡犬のオーナーに押し付けてきたり、まとめて業者に卸そうとしたりするかもしれません。そのような時あなたは対処できますか?生まれた子犬の責任は種牡側にもあるということを忘れないでください。