ブリーダーの第二段階
(AKCガゼッタ97年5月号より)
By Cindy Vogels
前回の私のコラムではブリーダーの第一段階について書きました。このコラムでは、次のステップ、すなわちブリーダーの第二段階について書きたいと思います。私はこの時期を青年期となぞらえたいと思います。なぜなら、天真爛漫で無邪気な時期から、知的に成熟し安定する時期との間の、難しい移行期間だからです。
「青年期」のブリーダーとはどのようなものでしょうか?典型的な10代の若者と同様に、彼らは自分達はもう成熟した大人として扱われる資格があると考えます。(すなわち、自分たちはすでにベテランブリーダーと見なされるべきだと思うのです。)そしてしばしば自分の能力を過大評価します。
この「青年期」のブリーダーの多くは、2、3胎ブリーディングし、2、3頭ショーに出したような人です。ビギナーがたまたま早くに成功を経験してしまったりすると、1胎ブリーディングしただけで、未熟なまま思春期に入ってしまいます。そしてあっと言う間に「ませた子供」ができてしまうのです。
批判的な眼
第二段階のブリーダーの最も悪い特徴は「欠点探し」です。青年期ブリーダーを特徴づけていることの一つは、彼らはある犬や出陳者、彼らの助言者、助言者の犬の「欠点だけ」を指摘するというということです。彼らは欠点にこだわり、そしてそれは自分たちの知識がある証拠だと考えます。そして、欠点を見つけるだけでなく、それを人に言う必要があると感じます。
そして、突然その青年期ブリーダーは、ちょうど10代の若者のように、自分たちの助言者を反抗すべき権威者として見るようになります。助言者にとっては、このような反抗に合うのはがっかりすることかもしれませんが、青年期ブリーダーにしてみれば、独立を主張することが必要だと思うようです。奇妙な矛盾ですが、これらの青年期ブリーダーは自分の助言者に反抗するのと同時に、必ずと言っていいほど、初心者に対して助言者として振る舞います。そしてその初心者も欠点探しのコツを学んでしまいます。
知識の不足と、独立しようとする気持ちゆえに、このような青年期ブリーダーは、しばしば間違った推論を元に決定を下してしまいます。彼らは、みんなもそうしているからという理由で、トップウイナーと交配したり、あるいは政治的な誘惑から、審査員や有名ブリーダーが持っている犬と交配したりします。一方で、自分たちの「仲間」ではない審査員や有名ブリーダーが持っている犬とは敢えて交配しないのです。
彼ら青年期ブリーダーは通常、他人の犬の欠点を見つけることは簡単に行いますが、時々その否定主義は自分の犬にまで及ぶときがあります。自分の犬の欠点ばかり気にして、良い点を完全に無視してしまいます。これは、人も犬も欠点を探されるべきではないと言っているのではありません。成功しているブリーダーは批評的な眼を養っているはずです。しかし、批判的な見方が肯定的な見方を圧倒し、消去法によって犬を評価するべきではないのです。
この段階のブリーダーは、ブリーディングに「絶対」とか「公式」を求めようとします。血統の研究に何時間も費やし、完全な組み合わせを求めます。紙の上で。最近では、彼らは膨大なデータベースを所有し、「この組み合わせなら、”あの有名なジョー”の血液は何%となる」、という事も計算します。しかし私はその有名なジョーという犬が子孫に良いものを伝えているのかどうかもわからないし、あなたの犬の血統とマッチするのかどうかもわからないと言いたいです。時代遅れのブリーダーと言われるかもしれませんが、私はコンピューターによるブリーディングは、非常に繊細な筆使いで書かれる絵を、無味乾燥な絵にしてしまうようなものだと思います。
犬の行き先を賢明に決める
この時点で、青年期ブリーダーは、成功するためにはブリーディングストックとペットとを区別しなくてはいけない、ということを認識すべきです。この二つは重複する時もあります。例えばあまりたくさんの頭数を飼っていないブリーダーなら、彼らのブリーディングストックは彼らのペットでもあるでしょう。しかしブリーダーなら、家をペットクオリティの犬で一杯にすることはできません。私の場合、ブリーディングをリタイアした犬は、私の家でペットとして暮らすか、愛すべきコンパニオンとして受け入れてくれる家に譲ります。
犬の行き先を決めるというのは大きな責務ですが、経験を積むに従ってうまくできるようになります。青年期のブリーダーは二つの落とし穴にはまるようです。一つは、ショークオリティかもしれないと思える子犬を全部手元に置こうとし、あるいはもっと悪いことに、間違った理由で子犬を残そうとすることです。(例えば、子供がこの子犬を気に入っているから、とか)もう一つは、すべての子犬をショーに出す人に売ろうとすることです。ショーに出してくれて、かつ良い家庭というのは本当に少ないく、稀です。
良い評判を勝ち得るためには、青年期ブリーダーは、「ショーに出すのはブリーダーさんにお願いします」というような人に喜んで子犬を譲ることです。ブリーダーはショータイプと思える子犬をすべて手元に残すことはできないでしょうが、ショーイングの経験を積むことは必要です。そのような取り決めの条件は最初からお互いに明確にしておくべきです。青年期ブリーダーは、助言者のアドバイスをもらいながら、子犬を正直に評価することを始めるべきです。そして、最良のものだけを選び出し、欲を出して、他の子犬をペットとして大切に飼ってくれる家庭に譲ることを見送るようなことをしてはいけません。
競争社会にあって、理想主義を貫くことは容易ではありませんから、第二段階にあるブリーダーは簡単に悪い方向へ向かう罠に陥ってしまいます。ほんの少し成功しただけで、他人の子犬のクオリティは全く見れないのに、自分のパピーは極めて優秀であると思い始めます。ビギナーはショーでリボンをもらうとそれがどんなリボンであっても満足するものですが、だんだんと経験を積み、一度何らかの成功をすると、さらに欲が出て、もっと良い成績を期待するようになり、そしてすぐ失望するようになります。
辛抱強くあること
私の二人の親友は、天性の犬を見る目を持っていて、もう10年以上犬に関わっています。二人とも、今までに2、3回しかブリーディングしていませんが、注意深く子犬の行き先を選び、そしてショーイングして成功しています。二人はまったく異なった個性を持っていますが、どちらも社交的で、一緒にいると楽しい人達です。お察しの通り、どちらもその犬種にとって宝のような人材です。
ある私の友人は、最近行われたマッチショーで、パピーのグループ2席となったのですが、成犬のグループ戦を見ようともせず、姿を消してしまいました。もう1人の友人はアダルトのグループ戦で3席となりましたが、ベストインショーが決まるまでとどまって見ていました。始めに述べた友人が立ち去ったのにはいくつかの理由があったのかもしれません。しかし私は彼女が成犬のグループ戦を見ないで去ってしまったことにがっかりしました。
息の長いブリーディングを続けるためには、識別力を養うことが大切です。その日の勝ち負けだけを気にしているなら、そのうち飽きてしまうでしょう。純血種に関わる人々の大多数は青年期ブリーダーであり、そのトンネルの中のような狭い視野ゆえに、ドッグスポーツで神経を消耗しています。犬の世界で長く、かつ成功している人達というのは、自分の犬達だけでなく、全体を見渡せる広い視野を持っている人達です。
どんなブリーダーにもこの青年期という時期があるのでしょうか?たぶんそうです。
しかし、10代の難しい時期を無難に通過する子供たちがいるように、多くのブリーダーも、無事にこの段階を切り抜けることができます。また、時々大人でも若者のような行動を取ってしまうように、円熟したブリーダーも時々、青年期ブリーダーのようなことをしてしまうことに気が付きます。つまり、いつでも大人でいるというのは難しいことだと言うことですね。
(著者Cindy Vogels は30年以上の経験を持つテリアのブリーダーで、10種類のテリアの公認審査員です。)
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