ブリーダーの第一段階
(AKCガゼッタ97年3月号より)
By Cindy Vogels
成功するブリーダーになるために必要なのは、忍耐、根気、そして信頼です。
私の前回のコラムでは、ブリーダーの進化の3つの段階について書きました。今回は、ブリーディングを始めること、すなわちブリーダーの第一段階に焦点を当てたいと思います。ブリーディングについて語る上で、まず第一に心に明記しておくべきことは、成功のために要求される最も重要なことは忍耐であるということです。近道はありません。すべてのブリーダーはたくさんの努力と時間を払わなくてはいけないのです。
誠実なブリーダーが、ビギナーにいきなりスーパースターを売ったり、初めてのブリーディングからグループウイナーや、犬種全体に影響を与えるスタッドドッグになるような犬が生まれるというようなチャンスはまずありません。私と母のジャッキー・ゴッティレブ(訳注:30年以上のキャリアを持つテリアのブリーダー)は、年に3〜4胎ブリーディングしますが、本当に犬種全体に影響を及ぼすような傑出した犬はだいたい10年に1頭くらいしか作ることができないと見積もっています。そしてそれは非常に幸運なことであると考えています。
助言者を探す
私が思うに、すべてのブリーダーはまず、ショーの出陳者としてスタートすべきです。実際、私はこれから純血種のショーイングとブリーディングをやってみたいという人には次のようなアドバイスをしています。まず、助言者を探すこと、そして、その助言者を信頼して、最初のショーのための犬を得るためのガイドをしてもらうこと。
信頼できるブリーダーから純血種の犬を買うことの素晴らしい点は、犬と一緒にそのブリーダーの知識と経験も得ることができるということです。そのブリーダーの親友になる必要はありませんが、なんでも気軽に話せる仲になることは大事です。必ずしも、その国で一番、あるいはその地域で一番有名なブリーダーから買う必要はありませんが、電話してみる価値はあるでしょう。そのような人達はそういう電話の応対にとても慣れていますから、たとえあなたと犬のやりとりをすることにならなくても、良いアドバイスをしてくれるかもしれません。しかし、犬種クラブのリストに載っているようなブリーダーの多くは、常時電話と手紙での問い合わせ責めにあっているということも知っておいてください。
どのような人を助言者として求めるといいのでしょうか?ショーで活躍している人を何人かピックアップして、ブリーディングに携わって何年くらいかと聞いてみてください。プロのハンドラーを使うときもあるけれども、自身でも実際にショーイングしているという人が最も助けになるでしょう。他の人に対して助言者であったかどうかを尋ね、そうであれば、その人の生徒の中ですでに経験を積んでいる人に電話をしてみましょう。
次に、そのブリーダーはどのような環境で飼っているでしょうか?「家の中で育てられた犬」を好むために、犬舎飼いをしている人をリストから外すべきではありません。美しい犬舎で、何人もの人を雇って最高のケアをしているケネルもありますし、地下室や車庫にクレートを積み上げて、1人で犬の世話に奔走しているというような「室内飼い」のブリーダーもいます。私は、商業目的の犬舎にはかかわらないほうが賢明だと思います。
あなたが気に入った人が、売る犬をもっていなかったらどうしますか?待ちなさい。ショーの出陳者あるいはブリーダーになるということは長期計画の仕事です。急いで行うべきことは何もありません。相応しい犬が今はいないということはごく普通にありえることなのです。もし数ヶ月待たなくてはいけないような場合でも、そのブリーダーがあなたがもっとも自分と合いそうだと感じたのならば、もっと先まで待てるかもしれません。
一方、経験あるブリーダーは、その初心者が、ほんとうにショーイングやブリーディングに興味があるのか、それとも単にそう言えばいい犬を譲ってもらえると思ってそう言っているのかを確認しようとします。私自身について言えば、私はショーに出陳する時間とお金に余裕のある人だけにブリーディング用として犬を売ります。ショー/ブリーディング用の犬を売るということは大きな仕事です。ショー用の犬を売る時、私はペットとして売る場合よりも、買い手とより密接で長い期間持続する関係を期待します。
フィニッシュできるペット
どの人も「ブリーディングを始めたいなら、できるだけ最高の牝を手に入れ、その牝に最高の牡を交配しなさい」というアドバイスをするでしょう。この古い格言には敬意を表しますが、私はそれに対し、「純血種のショーイングおよびブリーディングを始める際の最善の方法は、”フィニッシュできるペット”、それもなるべく牡を買うことです。」と言います。チャンピオンクラスでショーイングしたり、フィニッシュする事以上の事を期待できるほどではなくても、初心者のオーナーハンドラーでもチャンピオンフィニッシュできるような犬はたくさんいます。
そのような犬達は子孫を残す必要はありませんから、15ポイント取ってフィニッシュした後は、去勢して美しいコンパニオンとして飼うことができます。そのような犬達は見た目も良く、ショーマナーも入っています。もしブリーダーが長く手元に置いておいた犬なら、少し大きくなっていて、マナーも充分に入っているでしょう。例外もあるかもしれませんが、ほとんどの初心者は、スーパースターを育て上げ、キャンペーンするのはまだ無理です。スタークオリティではないけれども、そこそこ良いパピーで練習をするほうが、すべての面において初心者にとってはストレスが少なくて済みます。
なぜ牡のほうがいいのでしょうか?牡は発情周期がなく、態度やコートに影響を及ぼすホルモンの変動がないので、牡をショーイングするほうが面白いと私は思うのです。ではなぜせっかく初めてチャンピオンにした愛犬を去勢しないといけないのですか?「フィニッシュできるペット」は良いブリーディングストックになれる可能性があるかもしれませんが、多くの場合はそうではありません。
その犬がブリーディングクオリティでないなら、去勢したほうがその初心者とその家族にとってより良い家庭犬となるでしょう。初心者は助言者に相談して、その犬はブリーディングに用いると有益であるかどうかを判断してもらうべきです。もしその初心者が、さらなる段階を踏んで、牝を買うと決めていたとしても、その牡犬に関する決定は、そういうこととは完全に切り離してなされるべきです。
牡のパピーは、ショーイング/ブリーディングを始めようとする人に、犬の世界に”いきなり飛び込む”のではなく、”静かに足を踏み入れる”機会を与えてくれるのです。その犬をショーイングすることによって、彼らはショーイングというものが本当に自分たちが求めることなのかどうかを決めることができます。
言い換えれば授業料を払っているようなものです。多くの犬種において、典型的な牡の場合、チャンピオンをフィニッシュするのは18ヶ月から3才の間でしょう。ですから、その時までにその初心者は将来のブリーディングのために牝を買うことを考える時期になっているでしょう。そして、その決定をするのに充分な知識を得るための経験を積んでいるはずです。
この方法を取れば、初心者が初めてのブリーディングをする時までに、その人は牡と牝両方を育て、ショーイングしているわけですから、ただ牝を買ってすぐにブリーディングをしたという場合よりも、より信頼のできるブリーダーになることでしょう。彼らはいくつかのショー、望ましくは大きいショーや単犬種のスペシャリティに参加しているでしょうから、助言者と一緒に種牡を選ぶ能力も身につけているでしょう。初めてブリーディングした子犬を売る時までに、責任あるブリーダーの道を歩き始めるためのとても多くの経験をすでに積んでいるわけです。
近道はないのです。ショーイングやブリーディングといった厳しい世界にいきなり飛び込んでしまった人のほとんどは2、3年しか持ちこたえることができません。たくさんの質的に劣った犬が、無知な素人のおかげで、遺伝子プールの中に入れられています。
その一方で、多くのブリーディングに相応しい良い犬達が、初心者が興味を失ってしまったがゆえに、遺伝子プールの中に入れられないでいます。より良い犬をブリーディングしたいと思ったなら、ベテランであっても、これから始める初心者であっても求められることは同じです。忍耐、根気、そして信頼です。
(次号「ブリーダーの第二段階」に続きます。)
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