ブリーダーの進化
(AKCガゼッタ96年10月号より)
By Cindy Vogels
今月、全米中のテリアファンシャーが、モンゴメリーカントリーケンネルクラブの全テリアショーのためにペンシルバニアに集まりました。すべてのテリア界の人々は、この12のナショナルスペシャリティを合わせたよりも大規模なイベントにスケジュールを合わせていました。私達テリアのブリーダーは大きな希望を胸に抱いてショーに臨みました。もし自分たちの犬がこのショーで賞をもらうなら、それは本当に画期的な出来事となるでしょう。
そのような賞をもらうに値する犬を作る楽しみが、ブリーダーにとっての真の報酬です。そのためには多大な努力が必要であり、なおかつブリーダーとしての責任に忠実であり続けなくてはいけません。
私達は健康で、良い性格で、その犬種のスタンダードに沿った犬を作るために苦闘しなくてはいけません。これら3つの要素はバラバラに考えることはできません。優れた犬を作るために妥協できない条件を満たすことは私達ブリーダーが向かい合わなくてはいけない挑戦です。
犬を客観的に評価する
ブリーディングとは創造的な努力です。いくつかの遺伝的公式に基づいて、コンピューターが理想的な組み合わせを決定するということは可能かもしれませんが、私はこれはより良い犬を作るための良い方法だとは思いません。
普通のブリーダーと才能あるブリーダーを区別しているものは、知識による推測を用いる能力であり、あるいは単に、優れた犬を作るための「勘」であるとさえ言えます。勘の鋭いブリーダーは、自分の犬を客観的に見ることが出来、そしてどのような組み合わせがお互いを補い合うことができるかを心に描くことができるのです。これは抽象的なプロセスでは決してありません。ある特定の血統、あるいはある特定の個体さえ、確かに決まったいくつかの特徴を生み出します。ある犬達は別の犬達よりもより優性です。
これらのことを決断するのに近道はありません。コンピューターの前で限りなく時間を費やそうが、本を読むことに没頭しようが、ショーリングの中あるいは自宅で犬を見るという単純なことに取って代ることはできません。犬の特徴を見る「目」が高くなるほど、進歩も早くなります。ごくまれに生まれつき、理想の組み合わせを選ぶ直感的な能力を持った人もいます。しかしそうでない人は、そのような能力を持った人のアドバイスを受け入れるか、さもなくば成功はないでしょう。理想の組み合わせを選ぶ能力を身につけていくブリーダーもいれば、そうしないブリーダーもいます。
ですから、ブリーダーとは進化するものなのです。最初のよくあるつまずきは、犬の美しさに惑わされることかもしれません。美しい犬達がどれも同じように見えて、その違いを区別できないのです。まるで子供のように、それらすべての目新しさに喜ぶだけなのです。あなたも初めてのブリーディングの時は一日中子犬を眺めていませんでしたか?初心者のブリーダーは、そのような子供のような衝動を制御し、初めての胎から「素晴らしい次世代」が簡単に生まれるという幸運はそう多くはないということを認めなくてはいけません。そしてもし仮にそのような犬が出来る幸運に恵まれたとしても、それをどうやって知ることができるでしょう?その答えは、賢い熱心なブリーダーは、助言者からの賢明な助言を求めるということです。
助言者を探し、子犬達を評価する
助言者とその生徒の関係の大切さは、強調してもきりがないくらい大事です。理想的には、相互に益がある関係を保っていくべきですが、はじめのうちは一方的に受けるばかりでも生徒側は後ろめたさを感じるべきではありません。
初心者ブリーダーは、助言者から、創造的なことと実際的なことの両方に関してあらゆるアドバイスを受けなくてはいけません。若いパピーを総合的に評価することは大変難しいことであり、その血統に精通している人でなくては不可能といえますから、初心者ブリーダーはその血統とその犬達のことを良く知っている助言者をまず探すべきです。
助言者側にとっては、成功を分かち合うというのは大きな喜びです。たとえ経験の長いブリーダーであっても、常に新しいことを学んでいるものですし、そして多くの新しいブリーダー達が、彼らのしっかりと基礎を据えたブリーディングプログラムに、新しいアイデアを吹き込んで来たのです。新しい視点というのはいつでも有益ですし、新鮮な物の見方を導入することにより、ブリーディングのやり方に活力を与えられるかもしれません。
次のステージは、いわば「青年期」のブリーダーです。すべてにおいて批評的で、各犬の欠点を熱心に指摘します。しばしばこのような初心者は、他人の犬の欠点のほうが良く指摘できるようです。逆の極端は、初心者ブリーダーが自分の犬の欠点ばかりに異常にこだわり、他の考慮すべき事を忘れて、とにかくその欠点を撲滅させようと取り付かれることです。
2、3胎ブリーディングすると、多くのブリーダーは生まれた時点で子犬を自分で評価できるような気になり、8週令で、全部の子犬をショー用として売ったりします。また、この時期になるとよく初心者ブリーダーは助言者はほんとうに必要かどうか疑問に思いはじめるようです。助言者は生徒達に、生まれた時点で子犬を評価するなんてことは不可能であり、ショーのために残す子犬は8週令以降まで置いておかないと正しく評価できないということを教えるべきです。
この時期になるとこれら新参者の「専門家」はほとんどのアドバイスを退け、我が道を歩きはじめるのです。子犬を出し渋り、手元に多く残して置くようになるかもしれません。あまりにいい犬なのでペットで出すにはもったいないと考えるからです。熱心だけども自信過剰となり、このようなブリーダーたちはついには崖っぷちに追い込まれ、彼らの趣味は破綻していきます。その後、時間だけが、どのような道を歩むべきかを教えてくれます。そのまま進歩しないでいるか、あるいはブリーディングから足を洗うか、あるいはもっと賢くなって、経験豊富なブリーダーになっていくかです。
犬の全体像を心に描く
ブリーダーの進化の最終段階は円熟です。前述の第二ステージから一段向上する能力があるかどうかが、才能あるブリーダーとそうでないものを区別するのです。才能あるブリーダーは犬の全体を見て、自分の理想の全体像を常に心の中に持っています。各部分の重要性もわかっていますが、ある一部分を全体像に優先させたりはしません。
円熟したブリーダーは些細な欠点を見つけ出すという罠に陥ることなく、美しいブリードタイプを作り上げているニュアンスというものを感じることができるのです。彼らは個々の犬の長所と欠点を熟考し、その犬をブリーディングプログラムのどこで用いればベストな影響をもたらすかを決めます。彼らは他の人にとっても有益となるような犬を自分のブリーディングプログラムに取り入れようと努力します。
円熟したブリーダーは、自分がすべてを知っているわけではないことを認め、絶えず疑問を持ち、試し、自分の仮説を再評価します。そして引き続き、仲間として助言者達を頼ります。経験あるブリーダーはしばしば、助言者のことを思い出し、彼らから学んだことを復習します。そして順番として、間違いなく彼らは今、自分たちの生徒を持ち、彼らとの関係を楽しみ、彼らに何かを還元することを喜びとするのです。
私達の犬の世界には、過去の浮き沈みを耐え、世間に認められるブリーディングプログラムを確立し、現在頭角を表してきている人がたくさんいます。そのようなブリーダーは、すべての面で喜んで働き、その報酬も多いのです。ブリーダーにとって、前の世代よりもいくらか良い犬を作り出すよう努力することによって、高い基準を作り出し、かつ維持していくこと以上に大きな喜びはありません。
(次号「ブリーダーの第一段階」に続きます。)
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